アインクラッド編
過去の傷跡
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言ってしまっていることに罪悪感を覚える。
仲間のために、〈月夜の黒猫団〉やキリト、アスカのために戦いと思っている。
攻略組になろうとした決意に嘘偽りはない。
しかし、戦わず、街の中に留まりたいと思っているのも事実。
矛盾した感情を持ち合わせたサチはもう一度、感情をはき出すようにため息をついた。
午後からの戦闘ではサチはキリトとの連携を練習した。
アスカが以前にも片手剣のコーチをしていたキリトの方がサチとのタイミングを合わせやすいはずだ、と判断したからだ。
実際に、キリトと連携を取った場合、午前中にも数回成功している。
サチ以外の4人はかなり連携がスムーズになってきているので、アスカがまとめて指示を出す。
まあ、キリトが指示を出すことが苦手、というのも理由の1つであるらしい。
「サチ、わたしたちは基本的にあの5人がタゲを取り切れなかった敵を相手にするから、わたしが攻撃したらスイッチして」
「うん」
少し弱々しかったが、頷きと共に了解の意を示したサチは槍をしっかりと構える。
キリトの合図でアスカ達5人がタゲを取り損なったカメに狙いを定めてキリトが先攻して距離を詰める。
初撃を避けたキリトがカメの顔面にライトエフェクトを纏わした剣で斬りつける。
キリトの頭部のクリティカルポイントへの攻撃成功率は午前中の練習でコツを掴んだおかげで、6割程度。
今回は見事成功。
カメが小さな悲鳴を上げて硬直する。
「スイッチ!!」
キリトの声を聞いてサチは敵との距離を詰める。
何度もアスカやキリトに教えて貰った通り、動けないままのカメの頭部にソードスキルを発動しようとする。
その時、モンスターと目があった、気がした。
無論、敵に感情なんて存在しないので偶然でしかない。
だが、サチの体は視線が交わった途端動かなくなった。
怖い。
逃げたい。
戦いたくない。
後ろ向きな感情が体中を駆けめぐる。
至近距離でモンスター、化け物に相対することに足が震える。
しかし――――
「サチ!」
――――キリトの甲高い声が届く。
意志の籠もった、サチの背中を押してくれるような声だった。
何とかその場に踏む留まったサチは意志力を総動員して槍を突き込んだ。
ずがっ! と、サチの槍がカメが頭部を捉えた。
「や・・・・やった!」
思わず歓声を上げてしまい、恥ずかしげに俯く。
このくらいで浮かれる自分が情けない。
サチ以外の6人は当たり前にできていることなのだ。
「やったな、サチ」
一度2人揃って距離を取ると、笑みを浮かべたキリトがそう言った。
その、おそらく何気なく出た、ケイタやみんなにも言っているであろう言葉が、どれだけサチにとって嬉しかったか
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