Episode6:九十九家
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世界では『掃除屋』と呼ばれている。勿論のこと、それはゴミ掃除ではなく『暗殺』や『抹殺』のほうだ。依頼があり、理に叶っていて、依頼金を貰うことができればどんな人間でも殺す。例えそれが、この国の長であろうとも。その非情な仕事を生業としている家、それが九十九家の真の姿だ。
今、我が九十九家は最近活動が活発化してきたブランシュをマークしている。誰が依頼したわけでもないが、世の、いやこの国の風紀を乱すつもりなら、それは我が九十九家の抹殺の対象となる。
「依然、変わりなく活動は活発化してるね。しかも、最も活発なのがここ日本支部ときた」
俺の報告に、姉さんは深々と溜め息をついた。
「……不謹慎かもしれないけど、全く面倒くさい連中ね」
「全くだよ。魔法を否定する、とか言いつつ構成員はド三流とはいえ魔法を使う。結局は、なにを考えているわけでもなくただただ世界の天秤を狂わす馬鹿な連中だ」
「隼人、それは言い過ぎよ」
俺を嗜める姉さんに謝ってから、俺は隠れて溜め息をついた。
この国において、魔法師とそうでない人の差別はない。むしろ、本当はその逆、と言ったほうが正しいくらいだ。だが、表立った『差別』としてあるのは、魔法師の中での話だろう。優れているか、そうでないかの優劣。それが最も色濃く表れているのは、俺がこれから通うことになる『魔法科高校』だろう。詳しく言うと、一科生と二科生のことだ。
一科生には、教師からの直接的な指導を受けられるという『権利』があるが、二科生にはそれがない。魔法大学への進学を期待された一科生と、その『補欠』としてしか意味合いのない二科生。その差別意識は、昨日のあの座席順を見た限りでは教師よりも生徒のほうが強い。
一科生は二科生のことを自らの『補欠』としか見ておらず、雑草と蔑む。
二科生も二科生で自らのことを自分で『補欠』、雑草、劣等生と蔑み、そして一科生と自分を見比べ、劣っていることを自覚し、やがて『自分には才能がない』と逃げ、そして努力することを諦める。
それが、自分で自分を差別しているという、なによりもの証拠だということに気づかずに。
「はーやーと!なに考え込んでるのよ?」
むぎゅ、と頬を引っ張られて俺は半ば無理矢理に意識を思考の海から引き上げられた。顔を上げてみれば、心配そうに俺の顔を見る姉さんの顔。
「あ、はは。いや、なんでもないよ」
「はぁ…またなんか一人で溜め込む。そうやってると、いつか、死ぬよ?」
「はいはい、気をつけておきます。じゃ、これから学校だから!」
まったく、仕方ないわねぇ、という溜め息混じりの声を余所に、俺は鞄を手にとって玄関の扉を開けた。
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