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ホフマン物語
第一幕その四
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扉が開いた。そこから背の高い一人の若い男が酒場に入って来た。
「おお、遂に」
「やって来たよ主役が」
「色男のお出ましか」
 リンドルフも彼の姿を認めて誰にも聞こえることのない声でこう呟いた。
 その男は黒いズボンに茶色の上着、白いシャツに薄茶色のネクタイを身に纏っていた。そしてその上から暗いクリーム色のコートを羽織っている。如何にも、といった感じの詩人の格好であると言えた。
 顔立ちは悪くはない。むしろ整っている。ゲルマン系にスラブが入ったような端整な中に精悍さも感じられる顔をしており髪は銀色である。そして同じ色の頬髯を生やしている。それが彼の精悍さをさらに際立たせていた。目は青く、まるで湖のようであった。澄んではいたが何処か哀愁を感じさせる目であった。
「今晩は」
「おお、ホフマン先生」
 学生達は彼を認めると彼に声をかけてきた。
「やっと来られましたな」
「ちょっと仕事が長引いてね」
 ホフマンは彼等にこう応えた。
「司法官という仕事は。思っていたより大変だよ」
「何なら詩人に専念されては」
「いや、そういうわけにもいかないんだ、これが」
 ホフマンは苦笑いを浮かべて言葉を返した。
「音楽や絵もあるしね」
「おっと、そちらでしたか」
「それに酒も飲まなくては。今日はどんな酒があるかな」
「黒ビールのいいのが入っていますが」
「じゃあそれをもらおうかな。さて、と」
「席ならもう用意してありますよ」
 学生達はそう言って彼とニクラウスに席を勧める。

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