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Silent 60'S mind
猟犬のお巡りさん(その1)
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もう結構です。金銭を理由に命を賭ける必要はありません。それが出来るのはいつ死のうと構わないと考えている人間だけです。いつ死のうと構わないから、自分じゃない誰かが今死んでも良いと考えられる人間だけです。必要なのは義務でも執着でもない。覚悟です」

 そう言ったお嬢様の目には、やはりほの暗い炎のような光があった。彼女は僕に覚悟を示せと求めている。彼女は僕を信用していない。一緒に戦ってと言ったくせに。

 彼女は自分の行動が子供特有の物であると理解しているのかも知れない。大人は付き合ってくれないと思っているのかも知れない。十三歳。そのくらいの歳だ。人を疑う事を覚える歳だ。
僕はどうするべきだろうか。彼女に食って掛かるべきか? ……僕にそれは出来そうにない。見透かされそうに思ったからだ。

 彼女は百%の覚悟を求めている。お金の為とか、子供を見捨てて置けないとか、そういう迂遠な理由ではなく百%の覚悟を求めている。僕にはそれがない。当然だ。理由がないから。

 彼女は人の助けを求めていない。協力なら求めているが一方的な助けは必要ない。なら僕は不要だろう。しかし、どうしてだろう。僕は彼女が何をするのか、とても気になっている。

 瞳の中に黒い炎を宿したお嬢様は一体何者なのか。そのルーツを知りたいと思ってしまっている。

「僕は君についていくよ。護衛が気に入らないのなら相棒でも戦友でも何でもいい。義務感からじゃない。危険にわざわざ突っ込もうとする君がどうなろうと僕は素知らぬ顔を出来る。寝覚めは悪くなるかもしれないけどね。でも僕は僕で気になる事ができた。君がフォーザァーを探るという目的以外に、本当の両親を探すとも言ったよね。僕はそっちを探ろう。とても気になる。君がどこから来たのか。君のルーツ。君を手伝いながらそっちを探すよ」
 下世話な事だけども。そういうと彼女は驚いた顔をしながら、そうですかと興味なさげな顔を作って言った。



 翌日の事。僕達は共に行動する事をしなかった。明確な行動指針がなかったからだ。
 ならばと思い、僕はさっそく彼女のルーツを探る事にした。僕は僕で強力な助っ人がいる。

 岸部露伴。一時期、僕の家に住んでいた事もある漫画家。そして友人だ。お嬢様の話はきっと彼の好奇心を刺激するだろうし、ルーツを探る上でこの上ない協力者になるだろう。

 携帯電話から露伴の自宅番号を探し掛けてみると三十秒の呼び出し音の後に、留守番電話に切り替わった。

 出かけているのだろうか。まいったな、岸部露伴は携帯電話を持ち歩いてはいるが、鳴らしても絶対に取らない男だった。掛けてくる事はある。でも掛けても繋がらないのだ。その理由を問い質した事もあるが、呆れたものだ。

「僕には僕の用事があって、誰かに合わせてやるつもりはない
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