猟犬のお巡りさん(その1)
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杜王グランドホテル。僕はここに宿泊した事がない。もちろん、自宅が同じ杜王町にあるのだからホテルに泊まる必要性はこれっぽっちもないのだけれど、もし僕が別の場所に住んでいて、杜王町に滞在する事になってもこの杜王グランドホテルを使う事はないだろう。内装を見てみると理解が出来る。ロビーなんて噴水があった。僕は美術についてまったく詳しくはないけれど彫像やブロンズ像が置いてありさながら美術館のようだった。岸辺露伴がいたのならそこそこ面白い話が聞けたかも知れない。僕はあの人の造詣の深さから湧き出る話が好きだ。そういう話を聞いていると自分も頭が良くなった気分になるからだろう。ロビーからしてこうなのだ。二泊三日なら構わないだろうけども、長期滞在という形だとまず不可能だ。
しかし、このホテルの利用者は僕ではなくてお嬢様、静・ジョースターだ。僕はこれから色々と聞かなくてはならない。僕は彼女から聞かなくてはいけない。でもそんな状況ではなかった。
304号室を借りたお嬢様は、部屋に入ると早々に荷物を置き僕を椅子に座るように促した。平常心だ。彼女は平常心でいる。お嬢様の足元には彼女のベルトで手足を縛られたスタンド使いがいるというのに、彼女はまったく落ち着き払っていた。えもすると紅茶とか、ちょっとおしゃれに飲むような雰囲気だ。
「助けてくれヨォ〜。全身痛いんだ。骨が折れてる。どこが折れてるのかも分からないくらい、全身が痛いんだよォ〜。縛るのはやめてくれよ〜腕が変な方向曲がってるじゃねーか」
「良いですよ。ベルトを解いても。ただしその時は念のため両足も変な方向に向いて貰います。足を押さえて膝を横から蹴りつければ折れるでしょうか。それとも蟹の足を折って殻を剥くように、関節が曲がらない方向にポキッとしたほうが簡単でしょうか。どう思います? あ、私は貴方の名前も知りませんでした。教えてください」
本当にお嬢様は何者なのだろうか。目の前にいる今のお嬢様はたちの悪いギャングだった。
「分かった! やめろ、近づくな! 喋るから、名前を教える、ベルトもこのままでいい!」
「人間の反応って私、とても興味があるんです。見えない事って恐怖を感じると思いませんか? 私、貴方のナイフを取り上げたんですけど何処にも見当たらないんです。ついうっかり透明にしちゃったみたいで。どこかに置いたのか、それとも持っているのか。右手? 左手? どう思います?」
「喋るって言ってんダロォ〜がヨ〜! 俺の名前はアングル・ビーだ!」
「……静さん、そういうの、スピードワゴン財団に任せたほうがいいんじゃない?」
「二度手間ですよ。知りたい事は聞き出せばいいんです。尋問術とか、拷問術とか、そういう特殊な技能はないですけど、簡単じゃないですか。喋れば安全だけど喋らなければ安全じゃない。基本は何
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