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ホフマン物語
第一幕その三
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れを見届けた後で立ったまま手紙の封を切って手紙の中身を読みはじめた。
「ステッラからあの男への手紙だな」
 彼は差出人と宛先を見てまずはこう呟いた。
「鍵まである。どうやら本気のようじゃな」
 手紙からステッラがその男に対して本気で恋焦がれていることがわかった。リンドルフは手紙を読むにつれ危惧を覚えはじめていた。そしてまた呟いた。
「早めに手に入れてよかったわい。まだ間に合う」
 それから言った。
「わしは詩人でも画家でも音楽家でもない。ましてや恋がああだとかそういうのには疎い。じゃがそれでも知恵には自信がある。今はそれを使うとしよう」
 さらに言葉を続ける。
「燃えてきたわい。目が爛々と輝き、心臓に電池が宿ったようじゃ。さあ、プリマドンナを陥落させるにはどうすればよいか」
 その筋肉質の顔にエネルギッシュな邪悪が宿った。
「詩人を出し抜く、いや陥れるのは昔から酒と女と決まっておる。ここは酒場。では決まりじゃ」
 そこでニヤリと笑った。
「全ては決まりじゃ。ではわしはそれに合わせて動くとしよう」
 そう呟き終えたところでボーイ達がホールに入って来た。そしてボーイの一人がリンドルフに挨拶をしてきた。
「リンドルフさん今晩は」
「うむ、今晩は」
 リンドルフは鷹揚な仕草でそれに応える。
「今日はお早いですね」
「ここの酒を飲みたくなってな。美味いとびきりの酒を」
「また御冗談を。ここは安酒場ですよ」
「ふぉふぉふぉ」
 それに対してわざとじじむさくした笑いで応じた。
「上院議員ともあろう方が飲まれる場所だとは思えませんが」
「何、ここには学生さん達が来られる」
「はい」
「若い人達と一緒に飲む酒というもの程美味いものはないのじゃ。しかもここにはあの大詩人もよく来られる」
「ホフマンさんですね」
「うむ。彼は唄も美味い」
「そうですね。若しかしたら歌手としても通用するかも知れないです」
「それでですじゃ。ここは美味い酒と学生さんとのお喋り、そして大詩人の唄を堪能するところ」
「それは何より」
「今日も楽しませてもらいますじゃ。色々と」
「ところでリンドルフさん」
「はい」
 リンドルフはボーイの言葉に顔を向けた。
「一つ忘れ物がありますよ」
「それは何ですかな」
「うちのことですよ。うちはお酒だけが美味しいのではありません」
「といいますと」
「食べ物もです。これはお忘れなきよう」
「おっとと、これは失敬」
 ボーイの言葉に顔を崩して笑ってみせた。
「そうでしたな、これはこれは」
「今宵もソーセージにアイスバイン、ベーコンと用意してあります」
「そちらも楽しみにしておりますぞ」
「はい。おや、もう来ましたよ」
 扉の向こうからガヤガヤとした声が聞こえてきた。
「学生さん
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