第四幕その六
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だ。魂を持っている者は。
「私も。心がないから」
「馬鹿な、そんなことは」
ホフマンはそれを必死になって否定しようとする。
「君の心は僕が知っている」
「いいえ」
だがジュリエッタはその言葉に首を横に振った。
「私は娼婦よ。心なんて」
「嘘だ!」
ホフマンは叫んだ。
「そんなことは有り得ない!僕は君の心を知っている。君は・・・・・・」
「では何故鏡に姿が映らないの?」
そんなホフマンを黙らせるようにして言い返した。
「私の姿が映らないのは何故?それは心がないからよ」
「けれど」
「けれども何もないわ」
遮るようにして言う。
「鏡が全てを語っているわ。それだけよ」
「そんな・・・・・・」
「ホフマン」
ニクラウスが項垂れる彼に声をかけてきた。
「彼女の言う通りだ。今の君は悪魔に魂を奪われたんだ」
「じゃあどうすれば」
「取り返すしかない。僕に考えがある」
彼はここで提案してきた。
「シュレーミルも魂を奪われている。ジュリエッタもだ」
「うん」
「多分奪ったのは同じ奴だ。そうだね、ジュリエッタ」
「ええ」
ジュリエッタは頷いた。
「貴方の心を奪ったのは私だけれどそれを手にするのは違う人よ」
「それじゃあ」
「そう、ダペルトゥットだ」
彼は言った。
「あの男が君達の魂を持っている。彼から取り返すしかない」
「けれどどうすれば」
「勝つしかない」
ニクラウスは強い声で言った。
「あの男に勝つしか。違うだろうか」
「けれど何をやるっていうんだい?」
ホフマンは強い声で語る友に対して問うた。
「僕は法律家だ。生憎剣もピストルも得意じゃない」
「カードだ」
彼はまた言った。
「カード」
「そうだ。ポーカーで賭けるんだ、君達の心を取り戻す為に」
「ポーカーか」
「そうさ。それなら得意だろう・君が負けるのを見たことがない」
「わかった」
ホフマンはそれを聞いて頷いた。
「じゃあ賭けよう。金ならある」
「いや、今回賭けるのは金じゃない」
ニクラウスはそれを否定した。
「もっと別のものだ」
「それは一体」
「僕だ」
ニクラウスは自分自身を右の親指で指し示して言った。
「僕を賭ければいい。それなら奴も乗ってくる」
「君をか」
「そうだ。何か不都合があるのかい?」
「ある」
ホフマンは言い返した。
「君を賭けるなんて。そんなことが出来る筈がない」
友人を賭けることなぞ出来ようか。ホフマンはむべもなく拒絶しようとした。
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