第四幕その四
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わ」
こうして二人はパーティー会場へ戻った。二人別々にである。怪しまれない為の用心であった。
会場に帰ってみると皆賭け事に熱中していた。ホフマンとシュレーミルがポーカーで激しいやりとりを展開しているところであった。
ジュリエッタはここでチラリとシュレーミルの足下を見た。確かにダペルトゥットの言った通りであった。
(やっぱり)
そこには何もなかった。どうやらダペルトゥットはジュリエッタとは別の女を使って彼の魂を手に入れたらしい。本人はそれに一切気付いていないのであった。恐ろしいと言えば恐ろしいことであった。
「もし」
ジュリエッタはシュレーミルから目を離しホフマンに声をかけてきた。
「何か」
「御機嫌麗しいようですね」
「ええ、まあ」
彼は如何にも気分よさげにこう返した。
「調子がいいですから」
「左様ですか」
「全く。こんな手強い方ははじめてですな」
シュレーミルは苦笑してこう返す。
「私もポーカーではかなりの自信がありますが。その私が今まで一つも勝てないというのははじめてですよ」
「そうなのですか」
「ええ。おかげでこちらの方にえらく貢いでおります」
「ふふふ」
ホフマンはそれを聞いて面白そうに笑う。
「奥方はともかく殿方に貢ぐ趣味はないのですけれどね。困ったものです」
「貢がれるというのも悪くはないですね」
「まあそうでしょう。今までは私が貢がれる側でしたが最高の気分でした」
「はい」
その言葉に頷いてみせる。
「ですが勝利の女神というものは気紛れなもの。今度こそ勝ちますぞ」
「勝てますか?」
「勿論。私には勝利の女神がいますから」
不敵に笑ってこう返した。
「ではまたやりましょう」
「はい」
「最後に勝っていればいいのですからな、こういうものは」
「確かに。ところで」
「何でしょうか」
シュレーミルはホフマンの言葉に応えて顔を彼に集中させた。
「その勝利の女神のことですが」
「はい」
「ニケのことですか、それは」
ギリシア神話の勝利の女神である。アテナの従神の一人であり翼を持った美女である。アテナの意志に従い人に勝利をもたらすのである。
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