暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
弐ノ巻
かくとだに

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もしかして瑠螺蔚さまへの…」



「違う」



僕はカッとして咄嗟にそう言った。



けれどその気持ちを押さえる。僕がイライラしていると言ってもそれは僕の理由であって、妹にあたるなんて以ての外だ。



由良(ゆら)。瑠螺蔚さんには会ったんだろう?どうだった?」



「はい。瑠螺蔚さまは、(わたくし)の前では普通にしていらっしゃるようでしたけれど、どこか御様子がおかしかったです。やはり、俊成様やあやめ様のことがお辛いのでしょう…おいたわしいです」



由良はそっと滲んだ涙を袖で隠した。



「…それだけか?」



「…それだけ、とは?」



由良は少しむっと眉を寄せた。



由良は嘘をついている様子もないし、つく必要もない。



どういうことだ?瑠螺蔚さんが距離をとるようにいきなり敬語になれば、由良だったら僕に取り乱して泣きついてもおかしくないと思ったのだけれど、『どこか御様子がおかしかった』だけ、なんて…。



まさか。



「兄上様?顔色が悪いですわ。瑠螺蔚様のことが心配なのは私も分かりますが、兄上様までお倒れにならないでくださいね」



顔色が悪い?そうかもしれない。



「それにしても、私はやく瑠螺蔚さまでなく義姉上様とお呼びしたいですわ」



由良がひとり言のように呟いた言葉に僕はぎょっとした。



予想もしないことを言われて、深刻だった気持ちに一気に水を差された気分になる。



「由良、お前、一体何を言っているんだ」



僕がそう言うと、由良は呆れたような目を向けた。



「兄上様こそ、一体、今更、何をおっしゃっているのですか。瑠螺蔚さまをお好きなのでしょう?」



「な…っ、なんでお前が…」



色恋を面と向かって身内に指摘されるほど恥ずかしいことはない。僕は二の句が継げなかった。



一体、いつ、どうやって知ったんだ。



前田の当主、忠宗(ただむね)殿か?



なにしろ、僕は連日、瑠螺蔚さんを妻にと父の忠宗殿を拝み倒して(だく)と証文までとりつけたくらいなのだから。瑠螺蔚さんはいくらおてんばで顔は十人前…ごほん、とは言え、押しも押されぬ前田本家の唯一の姫。引く手は数多で、わざわざ佐々家の末の僕に嫁がせる必要もなく最初は渋っていた忠宗殿だったけれど、情に流されて首を縦に振ってくれたというわけだ。



「兄上様は瑠螺蔚さまのこととなるとすぐ顔に出ますから」



由良は含み笑いをしながら言った。



「でも兄上様
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