第四幕その三
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た。
「クラインザックさんは。その様な方だったのですか」
「あれは本当の話でして」
ホフマンは上機嫌で語る。
「面白いものでしたから詩にしようかと考えております。傑作になると思いますよ」
「期待していますね」
「有り難うございます」
「ただ、どうも貴方の作品は怪奇的なものが多いですね」
ホスト役であるシュレーミルがそう話を振ってきた。
「そうでしょうか」
「先にお話させて頂いた二つの作品も。他の作品にも多いですよね」
「よく御存知で」
「印象に残るのですよ、どうにも独特で」
「現実的でない、と」
「いえ、逆に現実味を感じます」
彼は言った。
「だからこそ怖い。本当に側にあるように思えましてね」
「実際にあったことを元にしていますからね。先程も申し上げましたが」
彼はこう答えた。
「それならばそうも感じられるでしょう。僕にとっては思い出したくもなかった話でしたが」
「おや」
「まあ今度は軽快な作品を書きたいですね」
「そのクラインザックさんの作品ですね」
「はい」
ジュリエッタの言葉に応えた。
「きっと傑作になりますよ。楽しみにしておいて下さい」
「わかりました。それでは」
「マダム」
ここで手足が長く、腹だけが出た虫に似た外見の男がジュリエッタに声をかけてきた。
「あら」
「ダペルトゥット船長が来られましたよ」
「船長が」
彼女はそれを聞いて妖しげな笑みを浮かべさせた。
「何の御用かしら」
「それは御自身でお確かめ下さい。離れの部屋でお待ちです」
「わかったわ。申し訳ないですが」
ホフマン達に顔を戻して言う。
「少し席を外させて頂きますね」
「ええ、それでは」
「失礼します」
頭を下げてその場を後にする。そしてジュリエッタは賑やかなパーティー会場を後にして離れの静かな部屋に向かった。そこにあのダイアを持っていた黒い服の男がいた。
「何の御用件ですの?」
ジュリエッタは妖艶に微笑みながら彼の声をかけてきた。
「頼みがあってな」
彼は笑いながらそれに応えた。
「ここに一人背の高い若者が来ているな」
「詩人のホフマンさんかしら」
「そう、あの男だ。今度はここにいる」
彼は思わせぶりにこう述べた。
「ここで会ったが何とやらだ。あの男の魂を欲しい」
「魂を?」
「そうだ。協力してもらえるか」
「報酬次第ね」
ジュリエッタは妖しげな笑みのままこう言葉を返した。
「安くはないわよ」
「それはわかっているさ」
ダペルトゥットも笑いながらそれに返した。
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