第7話 疑惑は確信に
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る犯罪者達を殺したのかは分からない。けど武偵法で殺人を禁止されている以上無視する事は出来ない」
「………………」
アリアは応えない。
尊敬する人が人を殺したという事実が、アリアの心を縛りつけていた。
四年の歳月を、レズリーの元で学び、武偵としての基礎、戦闘技術、念能力、学べる限界を学んだ。故にアリアにとってレズリーは、師というよりも、祖父に近い感情を抱いていた。
だからアリアは否定する。
どれだけ現実が純然たる真実を訴えていようとも。
「そ、そんなはずないじゃない…っ。レズリーさんがっ、レズリーさんが…ッ、人を殺す筈が…ッ!!」
「アリア…」
クルトは押し黙る。
今のクルトには、アリアに向かって現実を見ろ、とは言えなかった。言った所で意味がないと思ったからだ。
だからクルトは言った。
「なら確認しにいくぞ。あのクソジジイ共が何をしようとしているのかをな」
それは正に愚行。
武偵としての経験がゼロに等しいクルトとアリアにとって、情報の一切がない敵地に乗り込むなど自殺行為だ。
当然クルトもそれを理解している。
(だがここで戻って、ロンドン武偵局に「レズリーを含めた武偵十人が犯罪者を皆殺しにした後何処かへ逃走した」なんて言っても信じる奴なんていない。仮にいたとしても本格的な捜査が行われるのは明日以降になるだろうな)
―――そうなればもうレズリー達の真意は闇の中だ。
アリアは五日前、クルトに至っては昨日武偵になったばかりの完全なひよっこだ。そんな者の言葉と、武偵となって四十年以上のキャリアを持ち、ヨーロッパ最強の武偵の信頼、どちらが勝るかなど言うまでもない。
もし異変に気づいて調査したとしても、結論が出るまで最低でも一週間程かかる上に、そうなればレズリー達の真意を知る事は出来なくなる。
だが、そんなことよりも、クルトがこの行動を選んだのには理由があった。
(ここでノコノコと帰ればアリアが、そして俺が、納得出来ない…ッ!)
既にクルトの決意は終わった。
だから後は足を踏み出すだけだ。
「ま、待ちなさいよ…」
しかし、アリアの弱々しい声でクルトの足が止まる。
「…どうした?」
アリアが真実を知る事を恐れているのを知りながらクルトはあえてそう尋ねた。
「…本当に行くの…?あたし達が行っても何かを出来るとは思えないわ」
「そうだな。下手したら無残に殺されるだけかもしれない」
「なら―――」
「でも、俺達がこのまま帰っても、突き進んで殺されても、レズリー捜索に踏み切るまでの時間に大した違いはない。結果的にレズリー達には逃げられるのがオチだろう」
「だから…行くの?」
「ああ。それに武偵と
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