第一幕その二
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と限界がある。人ではない者もな」
思わせぶりにこう言う。
「だができることはする。君もそうしたまえ」
「わかりました」
「では早速言うが君のできることは」
「何でしょうか」
「何でしょうかではない」
このタキシードの男リンドルフはそれを聞いてまた低い声を出した。何処か人のものではないような声であった。
「君はステッラの召使だったな」
「はい」
「だからこそ君をここに呼んだのだが。今一つわかってはいないようだな」
「滅相もありません」
赤鼻の男は首を横に振ってそれを否定した。
「そんなことはとても」
「では君の名を聞いておこう」
「はあ」
「これからの為にね。では言ってくれ」
「アンドレと申します」
男は名乗った。
「アンドレというのかね」
「はい」
「よし、覚えた。ではアンドレ君」
「はい」
アンドレは頷いた。
「ステッラはミラノからここに来た。その理由を聞きたい」
リンドルフをアンドレの目を見据えながら問うた。黒い目が無気味に光る。
「どうしてこのベルリンに来たのか。答えてくれたまえ」
「仕事でです」
アンドレはリンドルフと目が合ったまま答えた。
「奥様は歌手ですから。仕事であちこち飛び回っておられて」
「まるで雉鳩の様にか」
「はい」
「人形の様に華麗な姿で」
「はい」
「娼婦の様に美貌をふりまきながら。そうだね」
「仰る通りです」
「わかった。ではそれだけかね」
「といいますと」
「他にもあるのではないのかね。このベルリンに来た理由は」
ここでリンドルフの目の色が一瞬変わった。琥珀からルビーになったのだ。
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