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巫哉

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なんで戻ってこないの?あたしのことが嫌いになっちゃったの?それとも怪我してるの?それで戻ってこれないとか?ねぇどうなってるの!?巫哉は無事なの?」



 日紅は妖の襟元をつかんでぎゅっと握りしめた。その手は震えていた。



「ヒベニ、お主はあやつを選ばなかったのだろう」



「…なに、選ぶって」



「お前が選んだのは人間の小僧だろう。ならば戻るがいい。ヒトはヒトの中で生きるのが幸せだ」



 日紅はカッとした。



 どうしてみんな、選ぶの、選ばないのと言うのだろう。日紅は、ただ、ただ3人で一緒にいたいだけなのに!



 誰かを選んだら誰かを選べないなんて、そんなことあるはずがない!



「巫哉には会う。それはあなたには関係ない!」



 日紅は掴まれていた腕を強引に振り払った。



「ヒトはヒトの中で生きるのが幸せ?そんなの、誰が決めたのよ!あたしは、巫哉にあえて幸せだった。それは巫哉が妖だったからじゃない。巫哉が、巫哉だったからよ!妖だヒトだなんて、そんなので差別するなんて違う!あたしは、犀が人間じゃなくても好きだし、巫哉が人間でも好きよ!そんなことで、あたしの幸せを勝手に決めないで!」



 日紅は溢れる涙を拭いもせずに叫んだ。



「お主の心には自由がある」



 妖は、そんな日紅を(あざけ)るでもなくそういった。



「だから、あやつを見つけることができたのかも知れぬな。だが、ヒベニ。生まれ持ったものは、抗えぬのだ。いくら嫌がろうとも、変えられぬものもある。そのことをわたしは言っているのだ。お主は純粋で美しい。それを失うのは惜しい。あやつのことは忘れるのだ。ヒトの理で生きろ」



「…あなたは、なぜ、そんなことをあたしに言うの?わざわざ…」



「ふん…。悠久の古より知る者のために、一つぐらい何かしてやるのも良いと思っただけだ」



「あなたは、巫哉のことがすきなのね」



「すき、か。人間の感情は分からん。だが、(すぐ)な瞳を持つヒトよ。お主のことも失うには惜しいと思う」



「…巫哉のためじゃないの?あたしが巫哉に会いたいと思うのは巫哉のためにならないの?あなたが止めるってことは、そういうことなの?」



「そうだ」



「なぜ」



「わたしから言うことはできない。ただ、あやつの考えていることはわかる。会えばお主は必ず後悔する。あやつも同様だ」



「…………」



 日紅はじっと黙った。日紅が『彼』に会うことは、果たしてお互いが後悔するようなことなのだろうか。しかしこの妖が悪意でこんなことを言ってい
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