第百二十四話 憎しみの環の中で
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まだ二十一だがな。それでももう母親なのかもな」
「それは羨ましいことだな」
依衣子も来て話す。
「私も何時かこうした子供が欲しいものだな」
「何だ?クインシィがそう言うのか?」
このことにだ。シラーが少し驚いて言う。
「どうにも意外だな」
「私もまた女なのだ」
これが依衣子の言葉だった。
「それならだ」
「そういうことか」
「そうだ。それでだが」
ここでまた言う依衣子だった。
「ルウはマイにもなついているな」
「そうだな」
彼女のその言葉にだ。シラーも気付いた。
見ればだ。実際にマイに笑顔を見せていた。
「だあだあ」
「私の方に来たのか」
「この子は」
「そうね」
アヤとセシリーがそれを見て笑顔で話す。
「マイのことがね」
「好きみたいね」
「どうすればいいんだ」
マイは戸惑いながら言った。
「こうした時は」
「ほら、おいでルウ」
アヤはまずはルウに笑顔で言ってルウを導きだ。そしてだ。
抱き寄せてだ。笑顔でこう言うのだった。
「よしよしい」
「だあだあ」
「こういう時はね」
ここであらためてマイに話すのであった。
「優しく抱っこしてあげればいいのよ」
「抱っこ?」
「そうよ。クロやシロを抱っこするのと同じよ」
シモーヌがマイにわかりやすく話した。
「あの時と同じよ」
「ああした感じでいいのか」
「それならできるわよね」
「うむ、できる」
マイはこくりと頷いて答えた。
「ああした感じならな」
「それなら。やってみて」
またアヤが妹に話す。
「今からね」
「私でもできるのだろうか」
「大丈夫よ」
不安がる妹にまた話した。そしてだ。
自分が抱いているルウを差し出してだ。こう言うのだった。
「ほら」
「う、うむ」
マイも頷きだ。そうしてだった。
ルウを抱き締めてみるのだった。
「私でもできるのだな」
「だってマイも女の子だから」
「それでなのか」
「そうよ。それでどう、ルウは」
「温かい」
まずはこう言うのだった。
「赤ん坊というのは」
「そうでしょ。温かいでしょ」
「それにだ」
「それに?」
「こんなに小さいんだな」
こうだ。しみじみとなっていた。
「そうなんだな」
「不思議かしら」
「ああ、とても」
まさにその通りだと姉にも返す。
「こんなに小さいのに」
「けれどね」
そのマイにだ。アヤは優しい声で話す。
「人は皆生まれた時はね」
「こうなのか」
「そうよ。赤ちゃんなのよ」
話すのはこのことだった。
「そうなのよ」
「というと」
それを聞いてだ。マイは思わずこんな話をしてしまった。
「リュウやライやアヤも」
「私もなのね」
「皆赤ちゃんだったのか」
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