第百十九話 もう一つの補完計画
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なかった気がする」
海の中で。華子を思い出しながら話した。
「だからきっと逃げ出してもよかったんだ」
「それでもなのね」
「逃げたところにもいいことはなかった」
レイにだ。話していく。
「だって僕がいないのも」
「貴方がいないのも」
「誰もいないのと同じだから」
「それなら」
今度はだ。彼だった。
「ATフィールドが再び」
「カヲル君・・・・・・」
「君や他人を傷つけてもいいのかい?」
「そう僕に問うんだね」
「その為にここに来たからね」
カヲルは優しい微笑みでシンジに告げた。
「だからね」
「そうなんだね」
「そうだよ。それでなんだ」
「そうなんだね」
「それでシンジ君」
優しい声でだ。シンジに問うのだった。
「君はそうしていいんだね」
「うん、考えたけれど」
「辛くて傷ついてもそれでもだね」
「そうしたいんだ。それにね」
「それに?」
「僕から問うよ」
こうだ。カヲルとレイに問うのである。
「君達はどうして今僕の心の中にいるのかな」
「希望よ」
レイが答える。
「それなのよ」
「希望」
「そう、ヒトは互いに分かり合えるかも知れない」
レイはこうシンジに言う。
「ということのね」
「好きだという言葉と共にね」6
カヲルも話してきた。
「その言葉と共にね」
「けれど」
しかしだった。シンジはだ。
諦める顔でだ。こう返した。
「それは見せかけなんだ」
「そう思っているんだね」
「自分勝手な思い込みなんだ」
こう言うのである。
「祈りみたいなものなんだ」
「君は。本当にそう思っているのかい?」
「ずっと続く筈ないんだ」
まだ言うシンジだった。
「何時かは裏切られるんだ。そして」
「そして?」
「僕を見捨てるんだ」
しかしだった。シンジの言葉が変わった。
「けれど」
「そうだね」
「僕はもう一度会いたいと思った」
こう言うのだった。
「その時の気持ちは本当だと思うから」
「それならだね」
「うん、僕は」
そしてだった。彼は。
「行くよ」
「その皆の場所にだね」
「うん、行って来るから」
「行ってらっしゃい」
レイがだ。微かに笑って告げてきた。
「そして、貴方の大切なものを」
「それをだね」
「その手にして」
シンジに告げた言葉はこうしたものだった。そしてシンジは。再び彼の場所に戻るのだった。
第百十九話 完
2011・5・6
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