第二幕その七
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
ってしまったオランピアの破片が辺りに飛び散るのを見て。
「これはどういうことなんだ・・・・・・」
「フン、こいつは人形だったんだ」
コッペリウスは金槌を両手に持ったまま不敵に言う。その目も顔も完全に悪魔のそれであった。
「人形」
「そうさ、人形だ。わしが作った人形だ」
「はい」
その足下にはオランピアの首が転がっていた。空を見詰めながら空虚にコッペリウスの問いに答えていた。
「それをスラパンツェーニに売ったのだ。はした金でな」
「はい」
オランピアは空虚な声でまた答えた。
「それがオランピアだったのだ。彼女は人形に過ぎない」
「人形・・・・・・」
「それじゃあ僕は人形を」
「そうさ」
ニクラウスが答える。
「信じられないだろうが本当のことだ」
「・・・・・・・・・」
彼はそれを聞いてガックリと肩を落とした。そしてそこに倒れ込む。その足下にも周りにもオランピアの破片が転がっていた。ゼンマイや歯車、ネジ、そして白い壊れた指が彼女が何者であったかを何よりも雄弁に物語っていた。
「人形だったなんて」
「地の底からの報いだ、スパランツェーニ」
コッペリウスは金槌を置きスパランツェーニに対して誇らしげに言った。
「ざまを見よ。わしを騙したからこうなる」
「この悪党が」
スパランツェーニはその身体をワナワナと震わせながら言葉を返した。
「こんなことをして只で済むと思っているのか」
「どうするつもりだ?」
「知れたこと。殺してくれる」
そう言いながら彼に掴み掛かろうとする。
「覚悟しろ」
「そんなことをしてもオランピアは元には戻らんぞ」
「こんなものどうでもいいわ」
「こんなもの」
ホフマンはその言葉に我に返った。
「人形なぞ。どうなってもいいわ」
「どうなってもいい・・・・・・」
「そうさ、オランピアはそうした存在だったんだ」
ニクラウスはホフマンに対して語った。
「心を持たない人形だったから。その程度の存在だったんだ」
「そんな・・・・・・」
その言葉が止めとなった。ホフマンはもう立ち上がれなかった。
後ろでスパランツェーニとコッペリウスの掴み合いの喧嘩がはじまった。客達はそれを呆然と見る。だがホフマンはそれを見ることはできなかった。ただ絶望の中に沈んでいた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ