第二幕その六
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女をよりはっきりと見たい為かあの眼鏡をかけていた。そしてワルツに乗って踊りはじめたのであった。
皆ダンスを踊りはじめる。その中央にはホフマンとオランピアがいた。彼は今幸福は自分と共にあると思っていた。
音楽が次第に速くなっていく。それにつれてオランピアの動きも。ホフマンはそれに合わせていたがやがてオランピアの動きはどんどん速くなっていった。そして遂には信じられないまでになった。
「!?おかしくないか」
客達もそれに気付き踊りを止める。
「おい、このままだと」
「ああ」
「いかん」
スパランツェーニもそれに気付いた。そして使用人達に顔を向けて言う。
「おい」
「は、はい」
彼等は主の言葉に慌てて演奏を止める。これでワルツは終わる筈であった。
しかしオランピアの動きはまだ止まらなかった。それどころかさらに激しくなりホフマンはそれに振り回されていた。それを見たニクラウスがそこに飛び掛かった。
「ホフマン、離れるんだ!」
「け、けれど」
だが離れることはできなかった。何とオランピアの腕が彼を完全に掴んでいたのだ。その手はぞっとする程冷たく、固かった。
「離れることが」
「それなら!皆さん!」
ニクラウスは客達に声をかけた。
「オランピアさんを止めて下さい!お願いです!」
「わ、わかった!」
「止むを得ん!」
客達はそれに応えオランピアに駆け寄る。そして彼女の身体を押さえその動きを止めた。こうしてホフマンは何とか彼女から離れることができた。そこにスパランツェーニがやって来た。
「娘が。申し訳ない」
そう言ってホフマンに謝罪する。
「いえ」
ホフマンはまだ完全に冷静さを取り戻してはいなかった。肩で息をしながら半ば呆然としてスパランツェーニに応える。
「怪我はなかったかね」
「はい、何とか」
服は破れている部分もあったがそれでも怪我はなかった。
「そうか。ならよかった」
「はあ」
「オランピア」
彼は娘に顔を向けた。
「はい」
あれだけのことがあったというのに彼女は汗一つかいてはいなかった。そして表情も全く変わってはいなかった。そう、全くであった。
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