閑話その一「姉が出来ました!」
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み、まったりと脱力する。ふぅー、やっぱりお茶はいいねぇ。落ち着くわー。
例の如く絶賛抱きしめられ中。もう朱乃ちゃんの膝の上が定位置になっちゃったよ。僕の髪を優しく梳く。
「レイくんの髪は触り心地がいいですわね、サラサラで。何かお手入れでもされてるんですか?」
「んー? 特には何もー。TS○B○K○のシャンプーで洗ってるだけだよー?」
資生堂のシャンプーは髪に大変よろしいのです。
「羨ましいですわ。何も手入れをされていなくてコレなんて」
「むふー、じゃあ今度、TS○B○K○貸してあげるー」
他愛のないことでクッキーが焼けるまで時間を潰していると、朱乃ちゃんが唐突にこんなことを聞いてきた。
「つかぬ事をお聞きしますけど、レイくんの親戚で背の高い男性の方はいらっしゃいますか?」
「んー、いないけど」
「そうですか……」
聞くところによると、朱乃ちゃんが小さい頃に助けてくれた男の人がいるらしい。そして、その男の人と僕の魔力の波長が似ているのだそうだ。
「もう一度合えたら、あの時のお礼が言いたいんです」
そう言って遠い目で語る朱乃ちゃんの顔が、何故か凄く綺麗に見えた。
「そっか、会えるといいね」
「はい」
しかし、僕の魔力に似ている人ねぇ。僕の魔力と波長の合う人なんて滅多にいないと思うけど、誰なんだろうね。
「でも、僕に親族はいないしなー。残念だけど心当たりはないねぇ」
「レイくんのご両親は?」
「僕に両親はいないよ。独りっ子さ〜」
「……ごめんなさい」
「んー? 別に誤る必要はないよ。もう大分昔のことだしねぇ。今じゃ顔どころか名前すら思い出せないよ」
まあそんなもんさ、気にしない気にしない。
しばらく何かを考えていたが、おもむろにギュッと僕のお腹に回した腕を強めた。
「朱乃ちゃん?」
「――なら、私が姉になりますわ」
「え?」
「家族がいらっしゃらないのでしょう? 今から私がレイくんの家族ですわ」
朱乃ちゃんは僕の頬と自分の頬をくっつけた。
「ですので、あなたはもう一人じゃないのですよ?」
「家族、か」
別に寂しいと思ったことは一度もない。血縁者の顔も名前も覚えていないし、両親を欲しいと思ったこともない。一人で過すことに不便を感じたこともないし、不満もない。
――だけど、
「……なら、朱乃ちゃんはお姉ちゃんだね」
少しだけ、胸の辺りがポワッとした。
†
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