第二幕その四
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スは用心という鎧を纏った顔であった。二人はその顔のまま右手の扉が開くのを見守っていた。
やがてまるで蝋の様に白い顔の少女が入って来た。プラチナブロンドの髪に大きな緑の目を持っている。唇は赤くまるで薔薇の様であった。
顔立ちはこの世のものとは思えない程美しかった。まるで童話の挿絵の中の妖精がそのまま出て来たようであった。
身体も細くまるで針の様である。その身体を白い絹のドレスで包んでいた。
「何て美しいんだ」
ホフマンはその姿を見て思わず息を飲んだ。
「そうだな」
「君もやっと納得してくれたんだね」
ニクラウスが頷くのを見て嬉しそうに応えた。
「ああ」
ニクラウスは頷いた。そして言った。
「まるで」
「まるで。何だい?」
「この世のものじゃないみたいだ」
「皆さん、こちらにいるのがオランピアです」
スパランツェーニは彼女が横に来たのを確かめてからまた言った。
「如何でしょうか」
「嘘の様な美しさです」
客達もホフマンと同じ様な返答であった。
「幻みたいだ」
「美しいのは姿だけではありませんよ」
スパランツェーニは思わせぶりに笑いながら述べた。
「歌も。素晴らしいのです」
「まことですか」
「はい」
スパランツェーニは頷いた。その間オランピアは表情一つ変えてはいなかった。それどころかピクリとも動きはしない。ただ父の横に立っているだけであった。
「どんな楽器の演奏にも合わせますが。どれが宜しいですかな」
「そうですな」
「ハープなんかはどうでしょうか」
ここで若い男の客が言った。
「おや、コシュニーユさん」
それを聞いて他の客が声をあげた。どうやらこの若い客の名はコシュニーユというらしい。
「ハープがお好きでしたか」
「あの様にこの世のものとは思えない方にはハープの声こそがいいと思いますが」
「成程」
客達はそれに納得した。
「それではハープで宜しいでしょうか」
「はい」
客達はスパランツェーニの声に頷いた。
「私共に異存はありません」
「それで宜しいです」
「わかりました。ではハープを」
「畏まりました」
主の言葉に従い使用人達が下がる。そして暫くして大きなハープを持って来た。
「それではいいな、我が娘よ」
「はい」
オランピアは父の手が肩に触れると頷いた。まるで機械の様に向き質な動作と声であった。ニクラウスはそれも見ていた。
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