第12話 水晶宮は何処に有る?
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つめる俺。ただ、黒猫と透明な顔をコチラに向けている長門有希。その姿が妙に様になって居るのは認めるべきですか。
まるで、魔女と、その使い魔の黒猫のような雰囲気。……とでも表現すると伝わり易いですかね。
そんな、非常にくだらない、更に意味の無い感想が心に浮かんだ瞬間、
【小僧。オマエ、何モンや】
……と言う、少女の声風の【念話】が心の中に響いて来た。間違いない。この【声】は、俺の知って居る黒龍の【声】。
そして、それとほぼ同時に、その【念話】に反応する有希。成るほど、二人に聞こえるように同時に【念話】を繋いだ、と言う事ですか。
【有希、驚く事はない。コイツは黒猫の姿を取ってはいるけど、本性は龍。徳島市内を流れる園瀬川と言う川の主やからな】
俺も同じように、二人に【念話】の回線を繋いだ。
そう、俺も龍なら、コイツも龍。お互い、顔を合わせただけで、大体その能力は判ります。
それに、俺は、コイツの事を知って居ますから。
何故ならば、俺と、この黒猫姿の龍神は戦友。共に、三年前の地脈の龍事件を戦い抜いた仲間。
但し、何故か、この黒猫姿の龍神は俺の事を知らない雰囲気でしたし、更に、俺は神代万結などと言う名前の人工生命体の少女は知りません。
彼女がここの関係者ならば、この世界には、俺……武神忍と言う人間は存在していない事に成るのですが。
【御初に御目にかかる古き黒龍よ。我が名は武神忍。この世界とは別の世界の住人で、古き龍の血を継ぐ末裔】
完全によそ行きの口調で黒猫、その本性は黒龍のソノに【念話】で告げる俺。
黒猫がひとつ首肯く。俺の知って居るコイツと同じ、猫のクセに非常に生意気な仕草。
そして、
【兄ちゃん、それなりに礼儀と言うモノを心得て居るやないか】
……と、【念話】で答えて来た黒龍ソノ。彼女の口調も、向こうの世界のこの黒龍とまったく同じ反応、及びその答え。
但し、彼女が現在納まっているのは、俺が知って居る、彼女の契約者である少女などではなく、長門有希と言う名前の少女なのですが。
もっとも、ここでは、彼女の契約者に対する詮索は後回しですか。
そう考えた後、視線を有希と、彼女に抱き上げられた黒猫から、安っぽいアルミ製の引き戸に移す俺。
そして、
流石に、この時間帯ですから、重い……少し建て付けの悪くなったシャッターは開いて有ったので、見慣れた安っぽいアルミサッシ製の引き戸に手を掛け……。
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