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ヴァレンタインから一週間
第12話 水晶宮は何処に有る?
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な排水用の溝には、ゴミやタバコの吸い殻が大量に散乱している。
 冬場故に、そう強烈な悪臭を放っている訳では有りませんが、少なくとも、午前中に歩く道でない事だけは確実な裏通り。

 もっとも、俺が知って居るこの辺りも、何時もこんな感じだったのですが。



 神代万結に連れられて(瞬間移動して)やって来たのは、とある街の中央公園。その端に存在する蒸気機関車を展示してあるスペースの傍。土曜日とは言え、真冬の事なのでそんなに人影も多くは有りませんが、この移動用の魔法陣の周囲には、人払いの結界が張られている事は間違いない雰囲気。
 其処から、徒歩で15分ぐらいの場所に存在する駅前のターミナルからバスに乗り、更に15分。アーケードに因って守られた商店街の入り口に近い停留所にて下車。

 尚、何故、こんな回りくどい方法ではなく、直接、その場所に転移魔法を使用して向かわなかったのかと言うと……。
 それは、俺と有希の正体が不明だからなのでしょうね。

 いや、もっと正確に言うのならば、長門有希に関しては正体が有る程度は判っているとは思いますが、俺の正体が不明だと思いますからね。
 長門有希に関しては、昨日の相馬さつきの台詞を信じるのなら人類に取って敵の可能性が高い。しかし、その傍らに居た俺は正体不明。故に、このような回りくどい方法を使って接触を図って来たのだと思います。

 そして、この向かっている方向に有る組織の出先機関は、天津神系の組織の出先機関では有りません。
 天津神系の組織で、この街に持って居る組織は県警東署内に有る特殊資料(死霊)課。そこの課長が当代の物部の長で、ニギハヤヒの命の転生体と目される人物。
 ヘブライ系の組織は、この日本の地方都市に過ぎないこの街には存在して居ません。故に、地脈の龍事件の際に二歩出遅れ、更に送り込んで来たエージェントたちも全滅する、と言う目に有ったのですから。
 国津神系は、平家残党が起こした地脈の龍事件の際に護って居た神器。古代の荒ぶる神。黄金龍八岐大蛇を、地脈の龍として勧進し、荒ぶる魂を慰撫する為に使用されていた神器を奪い去る際に、多くの者が平家残党の手に因って葬り去られた為に、現在は組織的な物は存在していないでしょう。



 その目的地。探偵事務所の前には、何故かこのクソ寒い真冬の午前中に、一匹の黒猫が座り込み、彼女(黒猫)の前に立った俺と有希、そして、俺達二人をここまで導いて来た神代万結を、猫に相応しい哲学者然とした表情で、順番に見上げて行くだけで有った。

「……やれやれ。こいつ、この世界にも存在していたと言う事ですか」

 俺が、ため息と、呼吸の中間のような息を吐き出しながらそう呟く。尚、有希はそんな俺の傍らに立ち、真っ直ぐにその黒猫を見つめるのみ。俺の独り言
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