第一幕その一
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ね」
酒の精霊達はまた騒ぎだした。
「トクトクトクトク」
「今日も飲めや騒げの大宴会」
「そこから何が出て来るのか」
「何が出るのか」
「それは飲んでみないとわからない」
「酒は全てを生むけれど」
「飲まない人にはわからない」
彼等は口々に唄う。自然と唄う声が増えていっていた。
「そう、お酒は飲まないと駄目です」
ミューズもそれに同意した。
「飲まないと。特に芸術家は」
「芸術家!?」
酒の精霊達はそれを聞いて言葉を一旦止めた。そしてそれから尋ねた。
「あの詩人のことかい?」
「ええ、その通りです」
ミューズはそれに頷いた。
「彼も。詩人であり音楽家である彼は決して水なぞ飲みません」
「確かに」
「だからこそ彼は芸術家になれた」
「全くその通りです。しかし」
だがミューズはここで言った。
「今彼は道に迷っています」
「道に迷っている」
「はい。愚かなことに」
「そうは言っても仕方ないんじゃないかな」
ビールの精の一人が言った。
「彼も人間なんだしさ」
「僕達精霊でも迷うのにそれはいいんじゃないかな」
「それで一人の芸術家が潰れるとしたら残念なことではないでしょうか」
「それでもね」
「仕方ないと言えば仕方ないよ」
酒の精霊達にとっては他人事でもあった。どうでもいいことのように言う。
「そんなに大事に思ってるのかい、彼を」
「ええ」
ミューズは頷いた。
「だったら貴女が何とかしたらどうかな」
「元よりそのつもりです」
そう応えるとにこりと笑った。
「それではあれをしましょうか」
「ああ、あれね」
精霊達にはあれが何なのかわかっているようであった。
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