第三世代ユキカゼ型駆逐艦ソヨカゼV39
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も抜擢を決意した彼女以外誰もが驚いたのである。
戦術コンピューターでの模擬戦成績では高勝率をたたき出した彼は卒業後に、エコニアの事件でお世話になり護衛巡航艦艦長になっていたムライ中佐の下で一年ほど下積みをしてこの椅子に座っている。
「お久しぶりです。先輩」
ブリッジに入り、戦術長の椅子に腰掛けて点検をしていた、アッテンボロー中尉が敬礼する。
ここまで的確に人間を集めてくれると、ヤンも苦笑するしかない。
それを象徴する人物が、航海長の席から立ち上がって敬礼した。
「はじめまして。
航海長のアルテナ・ジークマイスター中尉と申します。
以後、よしなに」
「先輩。
一体どんなコネを使ったんですか?」
「知りたいですね。
私はてっきりあの惑星で一生を過ごすと思っていたんですが、最新鋭艦に乗り込む事になるとは思いませんでしたよ」
最初の顔合わせからなだれ込んだ簡単なパーティーの席でアッテンボローの問いかけに、パトリチェフも食いついた。
アルテナと准尉が女の会話で盛り上がっているのを確認してから、ヤンが機密ぎりぎりの所で己の心情を漏らす。
「何、知られてはならぬ歴史に触れたという事さ」
その一言で、二人は捕虜収容所の汚職事件の事だろうと勘違いして口を噤む。
その勘違いが分かるだけに、ヤンも苦笑するしかない。
(言えないよなぁ。
帝国と同盟をまたぐスパイ組織の暗躍。
それを使って、アッシュビー提督が勝ち続けていただけでなく、あの人形師がイゼルローン要塞破壊の裏取り他、対帝国諜報の根幹にしていただなんて)
ケーフェンヒラー老人が記し、ヤンがまとめた『ケーフェンヒラー文書』は特A級重要事項として永久封印されている事を知っているのは、この場においてヤンと准尉しか知らない。
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