暁 〜小説投稿サイト〜
セビーリアの理髪師
6部分:第一幕その六
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
にも幾らか」
「わかってるさ」
 人懐っこい顔を見せるフィガロに心得た笑顔で応える。
「それじゃあまずはこれで。しかし」
 部屋を出ながらちらりとロジーナを見る。まだ彼を熱い眼差しで見ている。
「何という素晴らしい恋の炎。私を焦がして私以上のものにしてみせる」
「金貨のじゃれつく音がもう聞こえる」
 フィガロもフィガロで言う。こちらはお金だった。
「何といういい音だ。それが目の前に」
「私の心に染み透る神の恵み。これこそが私を燃やし尽くして私以上のものにする」
「ポケットに落ちるその金貨。それがおいらをおいら以上のものにしてしまう」
 そんなことを呟きながら二人は消えた。そうして部屋にはロジーナ一人になったのであった。
「この心の中に一つの声が響き渡って私を傷つけた」
 一人になった彼女はうっとりとした顔で呟く。
「傷つけたのはリンドーロ。それを許す方法はただ一つ、リンドーロを私のものに」
 彼女も彼女でそれを願うのだった。心から。
「それをきっと果たすわ。バルトロおじ様は反対しても何があろうとも」
 言いながら手鏡を出す。そうしてまた言うのだった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ