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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission7 ディケ
(4) ハ・ミル村 A
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「でもユリウスは俺には二人きりの兄弟だから。あの人以外に俺に頼れる身内なんていないから。出来た弟のフリをしてきた。手に負えない奴だと思われて捨てられないように。憎らしかったくせに、誰よりも俺が、兄さんから離れるのを怖がってた」

 ぷちん。茎がもうちぎれないほど短くなった。

「俺はずっと、兄さんから逃げたかった。ひとりに、なりたかったんだ」

 ルドガーは5ミリと残っていない茎を崖下に無造作に放り捨てた。

「なのにユリウスはいつまでも俺を縛りつけようとするから。だから――」
「だから剣を向けてでもユリウスさんから逃げ出した、ということですか」

 素直に肯く。あの時のルドガーは、ユリウスの掌から逃れたい一心だった。

「ですが最初はユリウスさんと同じ職を志されたと聞きましたが」
「どこに行っても身内だってバレたら比べられるって分かってたから。人生経験上。どうせなら同じエージェントになったほうが、比べられるにしてもマシかなって。肩書きが同じならコンプレックスもなくなる気がして」
「ずいぶんと消極的な動機だったのですねえ」
「本当にな」
「実際にお兄さんと離れてみていかがです?」
「清々した」

 予想より抵抗なくその感想は口にできた。

「張り合いはないけど。あー自由だなーって感じ。同居人はいるけど、四六時中一緒ってわけでもないから、すごく息苦しいってほどじゃない。でも」

 ルドガーは体を返して木柵にもたれ、俯いた。ずっと太陽を向いていたから、自分の影を見るだけで眼がチカチカした。

「1日ってこんなに短くて、あっというまに終わるものだったっけ、って、最近、よく思うように、なった」

 分史破壊任務の日も、クエストに出かけた日も、休みの日も、エルやミラと外出した日も。ルドガーの中ではどれもイコールでフラット。
 列車テロに遭ったあの日からずっと、日付や時刻の感覚がなくなっている。
 昨日は今日の、今日は明日のキャッチ&リリース。

「ユリウスがいなくなったから? それともエルたちが来たから? エージェントになったから? なあローエン、俺、おかしくなったのかな。時間がすごく早く過ぎるんだ。時間が過ぎてくのがすごく怖いんだ」
「ルドガーさん――」
「俺、どっかおかしいんじゃないのかな? 俺がした何かが間違ったから、俺、今こんなんになってんじゃないのかな。俺がしてきたこと……って、なん、だったんだ。俺、馬鹿なことしてきてたのかな? 俺が気づかないだけで、みんな俺のこと笑ってたのかな?」
「ルドガーさん」

 いつのまにかローエンが正面に立ち、硬く硬く握りしめていたルドガーの両手を持ち上げた。不思議だ。ローエンの手の感触を感じない。――痺れて、いる。

「そんなことは決してありませ
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