第二十四話 新たな敵
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。反発ではないだろう、真実訝しそうな表情をしている。
『公のおっしゃる通り政策が一貫しフェザーンは繁栄している。現状を見ればフェザーンの行動は正しい様に見える。だから誰も疑問を抱かない。しかし、これはまやかしだ。現実にはフェザーンは極めて危険な状態にある』
皆が黒姫に注目した。危険とは一体何なのか。
『この銀河には最盛期三千億の人間が居た。しかし今では帝国、同盟、フェザーンを合わせても四百億に満たない人間しかいない。大体十分の一になっている。この事が経済活動に及ぼす影響は決定的だ。フェザーンにとって市場が十分の一になった事になる』
彼方此方で呻き声が聞こえた。所々で“十分の一”と言う声も聞こえる。
『しかも長い戦争の所為で男性が圧倒的に少ない。当然だが生まれてくる人間も減少している。戦争をこのまま続ければ成人男性がさらに戦死し人口減少に拍車がかかる。冗談ではなく帝国、同盟の両国は崩壊しかねない』
会議室に沈黙が落ちた。皆顔を強張らせている。そして黒姫だけが淡々として話を続けた。
『フェザーンにとって帝国、同盟は大事な市場だ。その市場がどういう状況にあるか気付かないとは思えない。私が自治領主なら和平、或いは休戦を呼びかける。恒久的な物じゃなくていい、十年で良いんだ、十年戦争が無ければかなり違う。しかし、フェザーンの自治領主は五代に亘って帝国と同盟を噛み合わせる事しか考えていない、何故かな……』
「……」
黒姫が笑みを浮かべている。何処か寒々とした笑みだ。
『自分達の政策が誤っていると気付かない愚か者か、そうでなければ……』
「そうでなければ……」
フェルナー長官の問いかけに黒姫がクスッと笑った。
『政策の決定権を持っていないかだ。彼らはフェザーンの支配者ではなく使用人でしかないのさ。真の支配者にとってはフェザーンの繁栄は必ずしも重視すべきものではない。より重視すべきは帝国、同盟の崩壊、それによる宇宙の混乱、そういう事になる……』
会議室の彼方此方から呻き声が起こった、私も呻いている。そして黒姫が笑い声を上げた……。
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