第二十四話 新たな敵
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つ息を吐いた。
『……そう思いたければ、そう思えば良い。私には止める権利は無い。それで、何の用だ。……恨み言を言うために連絡してきたわけじゃないだろう、アントン・フェルナー国家安全保障庁長官』
何処か投げやりで突き放すように聞こえる口調に皆が顔を見合わせた。多分驚いているのだろう、我々が知っている黒姫とは余りにも違う。明らかに彼はウンザリしているしそれを隠そうともしない。
「済まん、責めているわけじゃないんだ。……ただ、確証が欲しい。ゴドウィン大主教の証言は有る、だが皆それを信用出来ずにいる。卿はどうしてフェザーンの支配者が地球だと思ったんだ」
黒姫が我々を見た、そしてまた一つ息を吐いた。呆れられている、情けなかったがそれ以上に彼が何故地球教とフェザーンの陰謀を察知したのか知りたかった。
『最初に思ったのはフェザーンは交易国家として不自然な点が有ると言う事だ』
「不自然?」
フェルナー長官の言葉に黒姫が頷いた。
『フェザーンは帝国と同盟の中間に有り両者と交易する事で繁栄している。ああ、断っておくが私は彼らを反乱軍などとは呼ばない。彼らは黒姫一家にとっては大事な取引先なんでね」
フェルナー長官がローエングラム公に視線を向けると公は渋々といった表情で頷いた。
「……分かった」
『では続ける、言わばフェザーンの繁栄は帝国と同盟が支えていると言って良い。酷い言い方をすればフェザーンは帝国と同盟から栄養を吸い取って肥え太る寄生虫の様なものだ』
「確かにその通りだが……」
言葉を続けなかったのは黒姫を誹謗する事になりかねないと思ったからだろう。確かに酷い言い方だ。
『当たり前の事だが宿主が死ねば寄生虫も死ぬ。帝国、同盟が崩壊すればフェザーンも没落する。そう考えると現状におけるフェザーンの政策、帝国と同盟の間で戦争を煽るような行為は不自然だと思わないか? 帝国、同盟、そのどちらか一方が崩壊すればフェザーンの繁栄は崩壊するんだ。連中は自ら没落への道を歩んでいる事になる』
「なるほど……」
なるほど、確かにその通りだ。ローエングラム公も皆も頷いている。
『此処までで腑に落ちない点は有るかな? アントンに限らない、疑問点が有ればおっしゃってください』
フェルナー長官が皆を見渡した。誰も発言をしようとしない。それを見て“続けてくれ”と先を促した。
『フェザーンの政策は不自然だ、その事に気付くともう一つの不自然に気付く』
「それは?」
黒姫が微かに笑みを浮かべた。冷笑? 嘲笑だろうか。
『フェザーンはその成立以来、ずっと不自然な政策を採り続けている……。これがもう一つの不自然だ』
彼方此方で唸り声、嘆息が聞こえた。
「しかし現実においてフェザーンは繁栄しているが……」
ローエングラム公が疑問を提示した
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