第二十四話 新たな敵
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いる、そういう事か。ボルテック弁務官は何と言っているのかな、確認はしたのだろう?」
私が問いかけるとフェルナー長官は力無く首を横に振った。
「知らないと言っております。ゴドウィン大主教の証言以外にフェザーンがこの件に関与しているという証拠は有りません、今のままでは……」
どう考えれば良いのだろう。正気とは思えない、しかし無視してよいのだろうか? 事実ならとんでもない事だが……。ローエングラム公の表情が渋いのは公自身にも判断がつかない所為だろう。
「元帥閣下、やはりこの一件、黒姫の頭領に確認した方が良いのではないでしょうか?」
躊躇いがちにキルヒアイス上級大将が進言するとローエングラム公の表情がますます渋くなった。はて、この件に黒姫が絡んでいるのか? 皆が顔を見合わせた。その事に気付いたのだろう、キルヒアイス上級大将が我々を見ながら話し始めた。
「今回の一件、キュンメル男爵が暗殺を計画している事、そして地球教が絡んでいる事を知らせてきたのは黒姫の頭領なのです。彼はフェザーンが関与している可能性も指摘していた」
周囲から溜息を吐く音が聞こえた。私も溜息を吐きたい。今回の暗殺事件を未遂に終わらせたのは国家安全保障庁、憲兵隊の働きによるものではなかった。黒姫の目と耳が動いたという事か、道理でローエングラム公の機嫌が悪いわけだ。
「彼は以前フェルナー長官にこう言ったそうです。“フェザーンはただの拝金主義者じゃない。あれは擬態だ”」
キルヒアイス上級大将の言葉が続く、そして会議室に沈黙が落ちた。皆が顔を見合わせている、これで何度目だろう。ややあって途惑いがちにケンプ提督が周囲を見ながら質問を発した。
「つまりフェザーンと地球教は同じ穴のムジナで彼はそれを知っていたと」
キルヒアイス上級大将が首を横に振った、違うのか?
「それだけではないかもしれません。彼はフェザーン、そして地球と戦っていたとは考えられませんか。イゼルローン要塞を落す事で反乱軍勢力地への侵攻を容易にしローエングラム公に宇宙を統一すべきだと進言していた。そしてヴァンフリート割譲条約はフェザーンの力を抑える為に結んだ……」
皆考え込んでいる。なるほど、今回の暗殺未遂事件、その理由を考えると黒姫の存在は大きい。フェザーンと地球教が宇宙の征服で結びついているとすれば黒姫の行動はことごとく彼らの邪魔をしているとしか思えない。偶然なのか、それとも必然なのか、フェザーンを危険視していたことを見れば偶然とは思えない。しかし、そんな事があるのか。己の利益を図りつつ敵に損害を与え続けた……。
「止むを得んな、フェルナー、黒姫に連絡を取れ。我々だけで考えていても埒が明かない」
ローエングラム公が忌々しそうな口調でフェルナー長官に命じた。なるほど、既に彼に確認しようと言う
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