弐ノ巻
輪廻
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らとまた佐々家に戻る。
みんなには大分心配させて、迷惑かけてはいるんだろうな、と思う。
けれど、なんだろう。何をしていても、心の底からの言葉が出てこない。笑うことも、泣くことも、怒ることも、必要であればするし求められれば応じるのだけれど、それにあたしの心がない。
特に高彬には、あらかじめ与えられた草紙を読むような、淡々とした声しか出てこない。
きっと、あたしは高彬を許せないんだと、思う。
兄上を助けに行こうとしたあたしを止めた高彬に。
頭ではわかってる。高彬が正しいんだ。あの時あたしがあの炎の家に飛び込むのは自殺行為だった。きっと、兄上のところに辿り着くこともなくあたしも倒れ骨まで燃えつくされていただろうなんてことはわかってる。できることなんて、水を川から運んできてかけるぐらいだったろう。
でも、あたしの感情が納得しないよ…。
高彬のせいじゃないのに、むしろ感謝するべきかもしれないのに、高彬を前にするといろんな感情が激しく渦を巻く。それに蓋をしようと心がせめぎ合う。
高彬は悪くない。高彬は悪くない。高彬は悪くない。高彬は悪くない。誰も、悪く、ない。
誰かを悪いとするなら。
あたしが悪いのかな。
兄上は、霊力があった。強い霊力。自分を一瞬で他のところへ移動できる霊力や、人間を癒させたり、見えないはずのものを視たりー…。
だから、火事で亡くなるなんて思いもよらなかった。絶対に逃げてくれているとそう信じてた。
けれど、霊力を使った兄上は衰弱してて、それで逃げ遅れて死んでしまった…。
そうだ、死んでしまったのだ。
あたしが目が覚めた時に屋敷から大分離れたところにいたのはきっと兄上が翔ばしたからだろう。バカな兄上。もし、一人翔ばせる霊力しか残っていなかったのなら、あたしなんか構わずに自分ひとり翔んで逃げていれば助かったのに…。
二人でいたら、一緒に逃げることも、何か方法を考えることもできたのかもしれないのに。
ねぇ、なんで兄上、死んでしまったの。
ふと気がつくと、空に月が出ていた。
凍えた空に月明かりは鋭く美しく映る。
あたしはそれに誘われるようにふらりと歩き出した。
門番もなぜか居眠りしていて、あたしは誰に咎められることなく佐々家を出た。
直土の冷たさが足の裏をきりきりと刺して、あたしは裸足で出てきたことに気がついたが、すぐにどうでもよくなった。
何
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