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セビーリアの理髪師
21部分:第二幕その五
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「随分繁盛しているな」
「おかげさまで」
 この言葉にはにんまりと笑って言葉を返す。
「ですから今日を逃されると」
「では仕方がないか」
「サービスしておきますよ」
「そうだな。では頼もう」
 少し考えてからそう答えた。
「それで。タオルを出してきてくれ」
「はい」
 バルトロはここで懐から鍵束を取り出したがすぐに引っ込めてしまった。フィガロはそれを見てバルトロに尋ねるのであった。
「何か?」
「わしが取って来る」
 何かに気付いてそう述べた。
「左様ですか」
「うむ。そういうことだ」
(ふうむ)
 フィガロは今まで鍵束を持っていたバルトロの手を見ながら考えた。そうして心の中で呟くのであった。
(あの鍵束が手に入れば大きいな)
 そう呟きそっとロジーナに囁く。
「あのですね」
「はい」
「あの鍵束の中に鎧戸のはありますか?」
「ええ」
 ロジーナはフィガロのその問いに囁きで答えた。
「確か一番新しいのです」
「そうですか」
 フィガロはまたバルトロの手を見て応えた。
「それなら」
「待てよ」
 バルトロはここでまた気が変わった。そのうえでフィガロに声をかける。
「フィガロ君」
「何でしょうか」
「やはり君に頼めるかな」
「宜しいのですか?」
「うむ。何かな」
 伯爵が化けている音楽教師とロジーナを見ての言葉である。二人の間に微妙な空気を読み取ったからこその言葉であった。

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