第一部
阿修羅との戦い U
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「埓があかないであります・・・。」
沙穂が詰まらなそうに呟いた。今も、上空からは雨のように攻撃が降り注いでいる。それを彼女は、驚異的な勘と身体能力で避けていく。更に、太陽が日食によって完全に隠れようとしていた。このタイミングで偶然日食が起きたなどと考えられる訳もない。これは、疑うまでもなく敵の権能による効果である。
そして、ただ単に日食を起こすだけの権能である訳がないのだ。まず間違いなく、太陽が完全に隠れてしまったとき、何かが起こるだろう。沙穂としては、それを悠長に待っている必要もない・・・のだが、
「跳んでも撃ち落とされるであります・・・。」
最初の不意打ちで数を減らせなかったのは痛かった。沙穂は、自由に空を飛ぶ事が出来ない。軽功や、飛翔の魔術など全く使えないのだ。自身の体に隠してある数々の装備の中にも、神の攻撃を避けながら近づく事が可能な装備など存在しない。ただのロケットブースターならあるが、それを使って神と空中戦を繰り広げるなんて愚行である。
「あの位置まで届く攻撃も、アレしかないであります・・・。」
彼女の切り札。切り札故に軽々と使える代物ではない。アレは、彼女にも多大な負担を要求する諸刃の剣である。必殺を確信した瞬間でないと使う事は出来ないのだ。―――以前の彼女ならば、後先考えずに使用して自滅していたかもしれない。だが、カンピオーネとなった彼女には、『勝利の為に全力を尽くす』という思考が植えつけられている。自分の命は、戦いに勝利するための大事なチップである。必要な時には躊躇わずBETするが、少なくとも今はその時ではないとカンピオーネの直感が囁いていた。
「こうなったら・・・。」
彼女は、攻撃を避けながらも周りを観察する。
「自分から行けないのなら、引きずり下ろすであります!!!」
幸い、そのための弾丸は、大量に散らばっているのだから。
☆☆☆
「え!?」
この戦いが始まってから何度目か分からない、アリスの驚いた声が響いた。
「何アレ・・・!?」
だが、仕方がないと言えるだろう。間違いなく、沙穂の戦いは歴史上初なのだから。彼女じゃなくても、この光景を見たならば叫び声くらい上げるはずだ。
「何かする気だね・・・。」
鈴蘭たちが見守る沙穂の肩口から、服を破って二本の腕が現れたのだ。それは機械の腕。銀色に光るその腕は、長さ二m程。沙穂は、その腕を利用して近くに落ちていた阿修羅の武具を掴んだ。・・・そう、先程から阿修羅が投擲武器として使用していたその武具を持ち、敵に向かって投げ返したのである!
パーン!!!
空気の壁を突破した強烈な音と共に、一直線に進んでいく阿修羅の武具。今彼女が投げたのは、長さ5m以上は
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