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スイルベーン
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随意飛行にはコツがあるからね。二人とも、教えてあげるから翅を出して」

 そう言われたのでキリトとゲツガは翅を出す。ゲツガは翅の出す感覚がどういうものなのか知らなかったが頭で翅を想像すると出てきた。

「とりあえず、後ろ向いて」

「「おう」」

 後ろを向くとリーファは肩甲骨の上辺りを触る。キリトの方に座るユイは興味津々と言った風に見ている。

「今触っているのがわかる?」

「「ああ」」

「あのね、随時飛行って呼ばれてるけど、ほんとはイメージ力で飛ぶだけじゃないの。ここんとこから仮想の骨と筋肉がのびていると想定してみて、それを動かすの」

「仮想の骨と筋肉か……難しいな……」

 キリトはそう言って身体を翅を動かそうとする。しかしそう言われてもピンとこないゲツガは肩甲骨辺りを動かす。すると、翅が反応してか動き始める。

「お、ゲツガ君のは動き始めた」

 コツを掴んだゲツガは激しく動かして飛び始める。

「お、だいぶわかってきた」

 そして、いろいろな飛行方法を試す。それを見たリーファは手を叩き賞賛を送る。

「うまいうまい。ゲツガ君はすごいね。すぐに覚えちゃうなんて」

「まあ、コツさえ掴めばこんなもんよ。それでキリトはどんな感じだ?」

 キリトはどういう感じなのかだけに気付いただけでまだ飛んではいなかった。しかし、もう少しで飛べそうな感じではあった。

「そう!そのまま!今の動きをもう一度、もっと強く、動かして!!」

 ゲツガはキリトの様子を空中から見物する。その時に、自分の尻尾も動かせるかなっと思ったので翅と同じ感じで動かしてみる。ちょうどキリトは唸りながら両手を引き絞っていた。十分な推進力が生まれると同時にリーファがその背中を押す。すると、キリトはロケットのように真上に飛んでいった。

「うわああああああぁぁぁぁぁ」

 キリトの体はたちまち小さくなっていき梢の彼方へと消えていった。そしてゲツガはあまりにもおかしかったので空中で笑い転げる。そして、だいぶ収まるとリーファに向けて言う。

「あいつを追わなくても大丈夫なのか?」

 ぽかんとしていたユイとリーファに向かって言うとようやく我に返った。

「やばっ」

「パパー!!」

 三人はキリトの消えていった梢に向かって飛びキリトの後を追う。樹海を脱し、ぐるりと夜空を見渡すと金色に輝く月に影を刻みながら左右にふらふらする影を見つけた。

「わあああああああああぁ……と、止めてくれえええええぇぇぇぇぇぇぇ」

 キリトの情けない声が広い夜空に響き渡った。それを見たユイとリーファとゲツガは顔を見合わせる。そして、ユイがくすっとした瞬間皆一斉に吹き出した。

「あははははははははは」

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