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セビーリアの理髪師
2部分:第一幕その二
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だ。
「おいらは稲妻みたいに動く町の何でも屋。全く素晴らしい幸福者だよ。おいらがいなければセビーリアの娘さんは誰だって嫁にはいけないし後家さんは再婚できないしね」
「そうなのか」
 歌が終わったと見た伯爵がさっと彼の前に出て来た。
「おや、これは伯爵様」
「フィガロ、久し振りだね」
 まずはにこやかに挨拶をする。
「元気そうで何よりだ」
「いや、伯爵様も」
 フィガロはにこやかに笑って伯爵に洒落たお辞儀をする。伯爵も優雅な動作でそれに返す。
「お元気そうで何よりです」
「相変わらず何でもできるみたいだな」
「ええ、まあ私のできる限りは」
 笑って謙遜してそう述べる。
「幸せに生きておりますよ」
「ふむ。そうか」
「それでどうしてこちらに?」
 フィガロは伯爵に問い返した。
「朝早くから。まさか朝帰りとか」
「馬鹿を言え」
 フィガロの小粋なジョークに苦笑いを浮かべながら応えて言う。

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