第二章「クルセイド編」
第二十五話「実証」
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僕に拒否権は有るまい」
「……意外とすんなり納得するんだな」
「『契約』だからな」
リオンは勿論略奪などしたくは無い。だが今、リオンがツァーライト一味と言う庇護を失えばどうなるのか。リオンには自分の手で作物を作ったり畑を耕す技能は無い。かと言ってこの世界に突然現れたリオンがマトモな職業に就けるとも到底思えない。剣士としての才能は有っても食料を得る金や技術は無いのだ。結局略奪に走る事になってしまうのだろう。何よりもそんな事にフェイトは巻き込みたくなかった。あの自分に良く似てしまった少女をこれ以上不幸にする事などリオンには看過する事などできるはずもなかった。エレギオの要求を呑めば彼女は決して巻き込まずに済む。否、己が矜持にかけても、絶対に巻き込ませない。リオンはそう思った。
エレギオはそんなリオンを見て笑っていた。嘲るのでもなく皮肉るのでもない。『仕事』を行なう時のエレギオ・ツァーライトは通常そんな笑みを浮かべる事はしない。エレギオは間違いなくこの時リオン・マグナスと言う少年の決断にはある一種の敬意の様な物を抱いていたのだ。エレギオは当然心を読む力を持っている訳でもないがリオンの性格、おかれている状況から今彼が大体どんな事を考えているかの見当はついていた。故にエレギオはリオンを尊敬した。仮に損得勘定の上で、ここで悪事に走らなくても将来悪事に走る事になるとわかっていてもあそこまで躊躇い無く納得することはそうそうできる物ではない。
「うんうん。めんどくさいのは俺も嫌いだしな。めんどくさくないリオン君にはプレゼントをやろう」
「一々癇に障る奴だな貴様は……。これは?」
「試作品のデバイス」
「ッ!?」
流石に目を剥いてエレギオから渡されたやたらとカラフルな包装が目立つまるでサンタクロースがクリスマスに良い子に配るプレゼントの様な箱に飛びついた。少々微笑ましくも思える光景だったがリオンは気にも留めずにビリビリと包装紙を破いて中にあるそれを取り出した。エレギオはそんなリオンを見ながらこう言う。
「魔法の『実証』って奴にも丁度良いだろ?」
−−−−−−−−
試作品のデバイスは小刀だった。
リオンは二刀流を操る剣士である。それも攻撃用の長剣と防御用のマン・ゴーシュの様な短剣を使うかなり正当な二刀流だ。巷では良く勘違いされて受け入れられているが二本の長剣を同時に操る二刀流は本来亜流なのだ。一本の剣で100なら二本の剣で200なんて言うのは唯の妄言である。
だがリオン自身他でもないその戦闘スタイルによって悩まされている事があった。それが防御用の短剣についてである。結局の所シャルティエと言う(リオンが使えばだが)魔法の障壁や、あまつさえ
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