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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
原作開始【第一巻相当】
第十六話「弟子」
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「弟子?」
「はい!」
俺の目を真っ直ぐ見つめながら頷く青野。その顔からはある種の覚悟が窺えた。
青野の弟子発言に耳をピクピクさせたハクが胡乱な目で顔を上げた。
「……何に対する弟子か知らんが、取りあえず話を聞こうか」
「俺、今回のことで思ったんです……。周りの人たちと比べたらなんの取り柄もないただの人間で、先生が言った通り、今までの常識が通用しない……。最低でも自分の身を守れる力が無いと、ここでの生活はすごく難しい――いえ、生きていけないってわかりました……」
ここでは人間は無力な存在だ。この変えようのない事実を改めて思い知ったのか、青野は膝上に乗せた手をギュッと握りしめた。
「そこまで分かっているなら何故、この学校に残ろうと?」
「……友達が出来たんです」
ポツリと漏れ出た言葉に思わず目を細めた俺は興味深げに青野を見やる。手元に視線を落としている少年は僅かに強張っていた顔に笑みを浮かべて、とても嬉しそうに言葉を続けた。
「その人はとても強くて、綺麗で……こんな俺を友達だって言ってくれました。自暴自棄になってひどいことを言ったのに、それでも、俺を友だって……」
それは嬉し涙か、はたまた悔し涙か。肩を震わせた青野は言葉を続ける。
「俺は、そんな彼女に報いたい。胸を張って友達だっていえる人間になりたい……! そのためには力がいるんですっ! この世界で生き抜く力が!」
「…………」
まるで慟哭のような心からの声。俺はそんな青野の本心を前に目を瞑った。
命のやり取りを直に目の当たりにしたんだ。青野の気持ちは本物だろう。
だが、まだ覚悟が弱い印象を受ける。
――……一度壁にぶち当たったくらいで人生観はなかなか変わるものではない、か。
答えは出た。目を開くと固唾を呑んでこちらを見詰める青野が視界に飛び込んだ。その姿に思わず目尻が下がる。
「すまないが弟子にはできない。が、自衛手段を得られるまで鍛えてやろう」
「ホントですか!」
「ああ。先生も青野を見殺しにするのは本位ではないからな。早速、今日から始めようか」
「あ、ありがとうございますッ!」
大きく頭を下げる青野。膝の上でハクが小さく鼻を鳴らした。
† † †
断られても何度でも頼み込むのを覚悟で弟子にしてくれるよう頼んだ。それがまさか、一発OKだなんて。
先生のようなすごい人に師事すれば俺もちょっとは強くなれるかもしれない
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