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セビーリアの理髪師
18部分:第二幕その二
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第二幕その二

「それが私の名です。バジリオ先生の弟子です」
「ドン=バジリオに!?」
 バルトロはその話を聞いて首を傾げさせた。それと共に記憶を辿る。
「彼に弟子がいたかな」
「それがいたのですよ」
 伯爵はしれっとしてそう述べる。
「私という素晴らしい弟子が」
「わかりました。しかしですな」
 バルトロはまた疑問を呈してきた。
「彼は今何処に」
「シェスタです」
 これは事実である。ラテンの習慣であり誰もが守っている。今守っていないのはあれこれ考えているバルトロとこれまたあれこれ動き回っている伯爵だけだったりする。
「ですから」
「しかしそれ位で代理を立てるのは」
「実はですね」
 芝居で深刻な顔を作って言うのだった。
「御病気でもありまして」
「病気!?急にか」
「どうも風邪のようです」
 これまた嘘である。何処までも適当な嘘をつく。
「それで」
「それはいかんな」
 バルトロはそれを聞いてすぐに医者の顔になった。生真面目な表情で述べる。
「すぐに様子を見に行こう」
「いや、それには及びません」
 今のバルトロの言葉は予想していなかったので内心結構焦っていた。だがそれはどうにかこうにか隠すことには成功した。少なくとも顔には出さなかった。
「それ程悪くはないので」
「そうか」
(胡散臭いな)
 バルトロもいい加減伯爵が化けているこの音楽教師を本気でそう認識しだした。
(どうにもこうにも)
「だが行こう」
「ですからそれには及びません」
「わしは医者だぞ」
 遂に権威を出してきた。医者という言葉は実に強い。
「そのわしが言ってるのだ。だからこそ」
「ですからそれには及ばないと。そもそも」
「そもそも。何だ?」
 迂闊にも今の伯爵の言葉に気を取られた。すると伯爵はここぞとばかりに静かな攻勢に出るのだった。
「私は別の用事でもこちらに参りました。そのことについてもお話させて下さい」
「それは一体何だ?」
(またしても出まかせか)
 バルトロはまたしても心の中でそう思った。
(この若い狐が。もう誤魔化されんぞ)
「それではですな」
 じろりと彼を見据えながら問うた。
「その御用件をお話下さい」
「はい」
 伯爵が化けている音楽教師はそれに応えて述べる。聞こえないような極めて小さい、蚊の鳴くような声で。
「・・・・・・というわけです」
「何とっ!?」
 全然聞こえなかったので思わず問うた。
「今何と言われた」
「ですから・・・・・・と」
 またしても小声で言う。
「おわかりでしょうか」
「全然わからん」
 完全にバジリオのことを忘れて彼に言い返す。
「何が何なのか」
「ですからロジーナさんのことです」
 彼が乗ってきたところで本題を出した
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