第百十四話 幕臣への俸禄その一
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第百十四話 幕臣への俸禄
細川は神妙な顔になりその上で酒を飲みつつ和田に話していた。
「倅は完全にそうなっておりますし」
「織田殿ですな」
「それがしも五万石を頂きました」
「それがしもです」
和田も飲みながら細川に答える。
「三万石を頂きました」
「そうですな。主だった幕臣は皆この度の織田殿の評定で万石を頂いています」
そして大身になったというのだ。
「どの御仁も」
「最早幕府から頂いている禄は僅かです」
「全くです」
今の幕府の力では彼等に禄を与えるだけでも手が一杯なのだ。義輝が殺されてから応仁の乱で落ち込んでいた幕府の力は最早どうにもならないまでになっていた。
最早山城も織田家が治めている。あるものは何もない。
幕府の禄なぞ千石あれば夢の様だ、しかし織田家からの禄はというと。
「万石とは」
「比べものになりませんな」
「どの御仁も公方様ではなく織田殿を見ておられます」
「そうなっていますな」
彼等は殊勲を信長だとみなすようになっているというのだ。
「この度の評定で幕府の下の者まで禄を貰っています」
「女官達にも贈りものがありました」
「だからですな」
「はい、今の幕府の者は」
細川は確かな顔で言った。
「織田殿の家臣です」
「まさにそうですな」
「それがし達も万石を頂いていますし」
「特に明智殿です」
和田は彼の名を出した。
「あの方は何と十万石ですぞ」
「そう、それです」
細川も和田のその話に乗る。
「明智殿の資質を考えれば当然ですが」
「十万石ですからな」
「公方様がどう思われるか気になります」
「そのことですが」
和田が言ってきた。
「どうも公方様は意に介しておられませぬ」
「左様でございますか」
「はい、よきことだと」
そう言っているというのだ。和田は細川の盃に自分が酒を注ぎ気配りを見せながら彼に述べたのだった。
「ただそう仰っています」
「お気付きではありませぬな」
話を聞いた細川の言葉だ。
「どうやら」
「お気付きではないと」
「はい、だからこその言葉ですな」
こう和田に言うのだった。
「幸いと言うべきか」
「我等の貰っている禄を合わせると今の幕府の禄よりも上です」
そこまで幕府の力は落ち織田の力があるということである。
「ここまでになりますと」
「最早幕府は飾り」
「このことがより顕著になっておりますな」
「左様。最早幕府の命運もまた」
細川はここではあえてここで止めた。
「ですから」
「このことに公方様は気付いておられませぬが」
「今のところは」
細川は言葉を区切ってきた。
「そうですな」
「今のところは、でございますか」
「はい、誰でも気付
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