郵便局での事件
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った直後に、きん、と小さな音がして、何かが壁に跳ね返って私の足元に転がってきた。金色の細い筒だ。
また顔を上げると、カウンターの向こうで、男性局員が目を見張って胸元を両手で押さえている。手の下の白いワイシャツに少し赤い染みが見える。
そう思った時には、男性局員が後ろに傾き、そのまま椅子ごと倒れた。
その時になって、男が拳銃を撃ったのだとわかった。
「ボタンを押すなと言ったろうがぁ!!」
甲高く裏返った声で、男がそう叫んだ。銃を握っている右手が震えていて、花火とよく似た匂いがした。
今度は男が拳銃を二人の女性局員に向けて、叫んだ。
「おい、お前! こっちに来て金を詰めろ!!」
しかし、その二人は固まってしまっている。
「早く来い!!」
男が鋭く叫んだが、二人の女性局員は首を細かく振るだけで、全く動けなかった。
男は苛立っているようで、カウンターの下を何度も蹴っている。
そのあとに、もう一人撃とうと思ったのか、拳銃を握った右腕を持ち上げると、性局員たちが悲鳴を上げてしゃがみ込んだ。
しかしそこで、男は体を反転させて、こっちの方をを向いた。
「早くしねえともう一人撃つぞ!! 撃つぞォォォ!!」
そう叫んで男が拳銃で狙ったのは──床に倒れているお母さんだった。
お母さんは、今起こっている事件のせいで全く動けない。
──私が、お母さんを、守らなくては。
その思いが、私を動かした。本を放り投げて飛び出し、男が拳銃を握る右手首にしがみついて、咄嗟に噛み付いた。
「あぁぁ!?」
男は急な出来事に驚いて、右手ごと私を振り回した。
そのせいで私はカウンターの側面に叩きつけられたが、目の前に、男の黒い拳銃が転がってきた。
私は無我夢中でそれを拾い上げ──
ガシャアァァン!
──ようとしたところで、ガラスの割れる音が響いた。
私も男も、ここにいる全員が一斉に窓の方を向いた。そこから私と同じ年くらいの男子が、背中を丸めて入ってきた。
この人がガラスを破ったのか、私がそう思っている間に、その男子は空中で足を下にして着地した。
その直後。
男子がいつの間にか私と男を遮る位置にいて、男の顎に右手でアッパーをしていた。その状態から跳んで、空中で男の頭に回し蹴りを繰り出した。
男は意識を失ったのか、そのまま倒れた。
私はそれを見ても固まったままだったが、その男子は男の様子を窺ってから、私に声を掛けてきた。
「大丈夫ですか?」
私はそれに答えようとして、男子の顔を見ると……。
同じクラスの、羽月君だということに気づいた。
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