郵便局での事件
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らなければ、と思うようになったのかもしれない。
そういえば、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが留守の時に来た訪問販売の男を、追い返したこともあったなあ。
なんて、思考に耽っていた私を現実に引き戻したのは、お母さんの声だった。
「……の、詩乃。大丈夫?」
そう言いながら、心配そうに私の顔を覗き込んでいるお母さんを見て、私は申し訳ない気持ちで一杯になった。
「……あ、ごめんなさい。ちょっとぼんやりしてただけだから、大丈夫だよ」
「そう? ならよかった」
お母さんが微笑みを浮かべてくれたので、私も安心した。
そのあとは、またお母さんと会話しながら歩いた。
そうして郵便局に着くと、タイミングがよかったようで他にお客さんがいなかった。だからお母さんはすぐに《振替・貯蓄》の窓口で、書類を出し始めた。私はその間、ベンチに座って持ってきた本を読んでいる。
そうやって本を読み進めると、キィ、とドアが鳴って一人の男が入ってきた。灰色っぽい服を着て、片手にボストンバックを下げている、痩せた男だった。
その男は入り口で足を止めて、辺りを見回した。その時に私と一瞬だけ目が合った。
白目が黄ばんでいて、変な目の色をしているな、と思った。その瞳が色々な方向に動いている。
私がそんな風に考えてると、男は駆け足気味に窓口へと向かっていった。
気になってそのまま見続けていると、その男が窓口で何かの手続きをしているお母さんの右腕をいきなり掴んで引っ張り、そのまま左手で突き飛ばした。
するとお母さんは声も出せずに倒れ込み、目を見開いて凍りついた。
私はそれを見て瞬時に立ち上がり、怒鳴り付けようとしたが、その時に、男がカウンターにボストンバックを置いた。そして中から黒い何かを取り出して、窓口にいる男性職員に突きつけた。
私はその行動を見て、ようやくその男が取り出したものがわかった。
ピストル──おもちゃ──いや本物──強盗──!? と、私の中で単語だけが流れていった。
そんな間にも、事態は進んでいく。
「この鞄に、金を入れろ!」
男の嗄れた叫び声が響く。
「両手を机の上に出せ! 警報ボタンを押すな! お前らも動くな!!」
続けざまに叫びながら、男は左右に拳銃を動かして、奥にいる局員を脅している。
今すぐに外に出て助けを呼ぶべきか? と一瞬だけ考えたが、お母さんを残していくことなんてできなかった。
私がどうしようかと迷っているうちに、男はまた叫んだ。
「早く金を入れろ!! あるだけ全部だ!! 早くしろ!!」
窓口の男性局員が、顔を強張らせながらも、右手でとても太い札束を差し出して──
パァン。
と、音がした。空気が膨らんだような気がして、耳が痺れた。
この耳の痺れはさっきの音のせいだとわか
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