強者との戦い
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っくに限界を迎えているから、これが本当のラストチャンスだ。
どう攻めるかはもう決めてある。
僕はタイミングを見計らって、動き出した。
再び助走して壁目掛けて踏み切り、縮地をする。先ほどと違うのは、樫明さんに向けて跳んだ訳ではないということだ。
僕が向かったのは──天井。
そこでさらにもう一度、縮地をする。
そう、まさにぶっつけ本番で縮地の二連続使用をしたのだ。
結果は、成功だった。
力強く天井を蹴り、重力の力までもを利用した、今までの限界を越えた最高の一撃を繰り出す。
その渾身の一振りが、樫明さんに向かって……。
──届けっ!!
その瞬間に、僕の意識は途切れた。
***
「う……」
気がつくと、僕は布団に寝かされていた。
「ここは……?」
そんな声が聞こえたからか、樫明さんが僕を覗き込んできた。
「やっと起きたか」
「樫明さん……? そうだ、試合……」
「いやー、あの時は本当に驚いた。お前が剣を振り切ったあとに、そのまま地面に倒れたもんだからな」
そう言いつつ、樫明さんは笑った。
「すみませんでした。それと、ありがとうございます」
「まあ、平気そうで安心だ。それで、あの時のことはちゃんと思い出せるか?」
「はい。なんとなく憶えてます。壁と天井で連続して縮地を使って、全速力で剣を振り下ろした。……そうですよね?」
「ああ」
「そして意識を失う寸前に、右手に微かな手応えを感じたんですが、これは樫明さんに当てられたってことですよね?」
僕は内心の緊張を抑えて、真剣に訊ねた。
「いや、なんだ。最後のは本気で避けようとしたんだが、僅かな時間だけ反応が遅れちゃってなー。左肩に掠めたよ」
樫明さんはそう言って、僕の頭を優しく叩いた。
掠めたってことは、当たったということで……つまり。
「よしっ!」
なんとか目標を達成できたことがわかり、思わずガッツポーズをしてしまった。
「まさか当てられるとはなあ。子供は成長が早くて、追い付かれないようにするのが大変だ」
「……後ろからの攻撃を、見もせずに防いだ人の台詞とは思えないですね」
僕は非難するような目線と共にそう言った。これにどんな反応をするかと思っていると、返ってきたのは笑い声だった。
「はっはっは。当たり前だろ。そもそも年季が違う上に、積み重ねてきたものの差もあるんだ。どんなに成長が早くても、簡単に乗り越えられる訳がないさ」
少しくらいは焦るかと思ったが、軽くあしらわれてしまった。悔しいが、まだまだ先は遠いということだ。
そんなことを考えていると、樫明さんが声を掛けてきた。
「よし、もう歩けるか?」
「大丈夫です。体は丈夫な方ですから」
「そうか。じゃあまた今度な」
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