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Muv-Luv Alternative~一人のリンクス~
帝国陸軍
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心させようと少し強く、優しく抱きしめた。

――――――――――

「落ち着いたか?」

 あのまま暫く唯依中尉は泣き続けた。俺はその間何を言う訳でもなく、只唯依中尉が落ち着くまで一言も喋らなかった。

「…はい」

「そうか…ならよかった」

 唯依中尉も落ち着いたと言う事なので、回していた腕を解き、ゆっくりと唯依中尉から距離を取る。その時視界に移った唯依中尉の目は赤く染まっており、目じりも少し腫れ上がっていた。

「使うといい」

 何時も身に着けているハンカチをポケットから取り出すと唯依中尉に手渡す。唯依中尉も何も言わず、俺から受け取ったハンカチを手に取ると、そっと目尻に溜まっていた涙をふき取った。

「シルバ少佐…有難う御座います。御蔭で何か腫れ物が取れたようです」

 そう言いながら少しの笑みを浮かべる。確かに心なしか先ほどよりもやんわりとした雰囲気になってりる気がする。

「このハンカチは後日洗って返します」

「…ああ、分かった。待ってるよ」

「…本当に申し訳ありません。少佐の軍服も…よごしてしまいました」

「そんな事気にしなくて良い。唯依中尉の助けになったのなら軍服が一つ汚れるくらい、どうでも良い事だ」

「ッ」

 …?どうも先程から唯依中尉の様子が可笑しい。俺の方に決して目線を合わそうとしない。

 …流石に初対面の男性に抱きしめられると言うのは…不快に感じたか。当然の事か。何故あんな事をしたのだろうか。少し後悔の念が生まれる。

 そう感じると同時に場を満たす沈黙の空気。これ以上、この場にいると何か可笑しな事になりそうなので、そろそろシミュレーターの方に行くことにしよう。

「それでは落ち着いた所でシミュレーターの方に行こうか。XM3がどんなものかも見たいだろう?」

 そう言う前に謝っておけばいいものを…どうにも言える空気ではなかった為にそう切り出してしまう。

「あ、はい。分かりました」

 唯依中尉の了承も得られたので、部屋の椅子を元の位置に戻し、先に部屋の扉を開き、外に出る。既にシミュレーターがある場所は分かっているので、後ろから唯依中尉が付いてきている事を確認してから、唯依中尉の歩く速度にあわせながらもシミュレーターの方に向かった。
 

 
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