第十一章
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とも『ビアンキは』と言ったのか」
「ビアンキって、言ったけど」
「そうか…なぁ、これは言う必要はないと思ったから黙ってたが、ハルとビアンキの間には決定的な違いが………」
紺野さんの声が、ふっと掻き消えた。眉間に深くしわが刻み込まれ、その口元が引き結ばれる。彼はすいっと身を起こすと、そっとドアから離れた。
「紺野、さん?」
「水の音が、止まった…!」
「………は?」
こ、この人…こんな深刻な話をしつつ、ずっと柚木のシャワー音に耳を傾けていたのか!…不覚にも感心してしまうくらい徹底した変態だ。変態は、険しい表情を保ったまま、腕を組んで僕を見下ろした。
「姶良。ナースの柚木ちゃんに、第一声で何を言って欲しい?」
唐突に降り注がれたエロの光に、石をどかされたダンゴ虫のように慌てふためく僕。
「え…えと…『お注射の時間です♪』とか…」
「…はっ、オリジナリティのカケラもない奴め」
「なんだよ、ナースとかスッチーとかは定型モノだろ。そういう紺野さんはどうなんだよ」
奴はニヤリといやらしい微笑を浮かべ、壁にもたれた。
「俺ならこうだ…『この下、何も着けてないんだよ…』」
「反則だ!そんなの、なに着てたってエロいじゃないか!!」
「むっふっふっふ…そしてそのまま『直腸検温しまーす』」
「アタマ悪いAVのシナリオか!」
「そして俺は仰臥位!!」
「あんたかよ!!」
「決め台詞はこいつだ…『あん、だめ、入らないよぉ…(体温計が)』」
「うっわ変態だ、すごい変態がいる!!」
「うるさいっ、廊下では静かにしなさいっ!」
心臓がはみ出るくらいに躍り上がって、弾かれるように振り向いた。シャワーのせいか、ナース服が恥ずかしいのか、頬を上気させた柚木が、ドアの陰に立っていた。
「…第一声は『廊下では静かにしなさいっ』だったね…」
「委員長系看護婦か…アリだな」
変態が選んできた小ぶりのナース服は、柚木の体に必要以上にぴったりフィットして、下着の線まで見えそうな勢いだ。体の横に入った浅いスリットから見える脚は、多分僕が今まで見たことがないほど上のほうだ。日にあてられず、大事にスカートなりジーンズなりに包まれてきた肌色。それはミルクプリンのように柔らかそうですべすべで…多分、柚木の服の下に隠れた肌は、全部こんな感じなんだろうか…耳が熱くなるのを感じながら、僕は心の中で叫んだ。
――紺野さん、グッジョブ!
紺野さんはドアの陰から出てこようとしない柚木の全身を嘗め回すように眺めると、性懲りもなく興奮気味に叫んだ。
「に、ニーソだ、白ニーソのナースがいる!」
「なっ…仕方ないじゃん、替えはこれしかないんだから!」
耳まで赤くしてドアの陰から出てこない。…僕は思い出した。ここに来る前に、沿道のコンビニで替えの服や生活用品を揃えていた
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