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くらいくらい電子の森に・・・
第十一章
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、だと?
「なにそれ、昔のSF?」
「理論上は不可能じゃない。現に俺達の脳は電気信号が動かしているんだからな。ただ、その電気信号の流れを詳細に、正確にトレースできる人間がいなかっただけだ。…世の中ではそういう人間を『天才』もしくは『狂人』と呼ぶ」
「…そ、そんな流迦ちゃんが…」
「あれだけの異能だ。その片鱗は、小さい頃から見えてたはずだ。その才能を全部尻の下に押し潰して『清楚で可憐なお嬢さん』に仕立て上げようとしたのは、あの子の親父だよ」
「………」
「ま、珍しい事じゃないさ。…お前らの血筋は『道筋を辿る能力』に長けてるみたいだな」
からかうように言われて、はっとした。そう、僕もよく似た『異能』を持っている。…僕の異能の方は、精々仲間内で『地図要らず』とか呼ばれる程度だけど。
「あーあ…僕のももう少し、カッコいい能力だったらよかったなぁ…道を忘れないとか、微妙に便利なやつじゃなくてさ、こう『異能!』って感じの」
「何を言うか。一瞬表示されただけの見取り図をそっくり記憶してるんだぞ。お前も充分恐ろしいよ。…丁度そのとき、社では一般ユーザー向けのセキュリティソフト市場へ進出するための、強力な『武器』を探していた。俺は、これしかないと思ったんだよ。…初めて会った日に話したな。俺が提案したのは、コミュニケーション的要素を加えることで、対人セキュリティを充実させた、まったく新しいタイプのセキュリティソフト。それに俺が以前からあっためていた『ウイルス消化機能』を組み合わせて出来たのが、今のMOGMOGだ」
「じゃあ、MOGMOGの感情は、人間そのものなのか…?」
「いや、それは人道的にも容量的にも色々問題があるだろうからな。パソコン用にカスタマイズをしてあるはずだ。喜怒哀楽は抑え目にしてあるし、触覚、嗅覚、味覚に連動する電気信号は削除するか、不自然にならない程度に、他の感覚…視覚や聴覚にバイパスさせた。それらの作業をしたのが、あの子だよ」
「…それで、あそこは『開発分室』ってわけなんだ」
「そう。あの子はあれでも、うちの社員だ。…で、お前が言っていた『重大な欠陥』の話に戻ると」
紺野さんは、あごに手を添えて俯いた。
「正直、あのプログラムは俺にはさっぱり理解できない。他の人間にも見せてみたが、同じ事だった。…そりゃそうだよな。誰かの脳の中を覗いて『分かれ』って言うのと同じだもんな。だから、あのプログラムは俺達にとってはブラックボックスなんだよ」
「そんな危険な…」
「一応、動作確認はした。でも誰も構造を理解してないんだ、拾いきれないエラーの一つ二つは内包してるかもしれん。流迦は、それを見つけたのかもしれないな。…いや、ちょっとまてよ。…なあ、姶良」
「ん?」
「欠陥プログラムの話が出たとき、あの子は『MOGMOGは』と言ったか、それ
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