第十一章
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……おい。
「…何、出てきてんの。見つかるよ」
「妙なものだな、このドア一枚隔てた向こう側で、全裸の柚木ちゃんが、あんな所やそんな所を洗っているなんて」
そう言って紺野さんは、そっとドアに身を寄せた。…見取り図では洗面と脱衣所と個室があったので、正確にはあと2枚のドアを隔てないことには柚木の全裸に到達し得ないんだけど、言ったところで紺野さんの幸せが半減するだけなので黙っておく。
「あの胸、Eはあると見た。脱いだら相当、エロい体なのだろうな」
「ちょっと尻が大きいけどね」
「あの尻がいいんじゃねぇか…ナースの格好なんかさせたら、たまらん感じになるぞ」
「あぁ…ナースはベッド脇に座ったり『直腸検温しまーす♪』とか言って後ろ向きに馬乗りになったりするもんね、ビデオとかでは…」
「うぅむ、あの尻で、馬乗り…か。おい姶良!その辺は同じサークルの誼でどうにかならんのか!!」
「そんな軽い誼でどうにかなるなら、とっくの昔にどうにかしてるさ…」
「諦めるな!お前は堪能したくないのか、仰臥位でじっくりと」
「ねぇ落ち着いて…直腸検温はうつ伏せだよ…」
たわいない世間話を交わしながら、僕はふと流迦ちゃんのことを思い出していた。柚木との対比でというわけじゃない。…別れ際にかけられた、あの言葉を思い出したんだ。
『あれは、重大な問題を内包する欠陥プログラム。…アンインストールなさい』
あの言葉がただの嫌がらせだったとは思えない。彼女は、ビアンキが欠陥プログラムであるという確証を持っている。そんな気がした。
「…流迦さんに、ビアンキをアンインストールしろって言われた」
「仕方ない奴だな、あいつは…」
「重大な問題を内包する、欠陥プログラムだって」
紺野さんの目が、ふっと険しくなった。
「…あいつ、確かにそう言ったのか」
「うん。…心当たり、ない?」
「ないことは、ない」
胸ポケットに入った携帯の電源を切り、腕を組んだ。
「車の中で、少し話したな。…ビアンキは、夢をみるかもしれないと」
「あと、流迦さんが『産みの親』だって」
「まず、MOGMOG開発における流迦のポジションを、ちゃんと説明しようか」
そして、いつにない真顔で語り始めた。
「俺は流迦に出会ってからずっと、彼女にプログラミングのことを学ばせてきた。あの子が遠い将来、ここを出られるようになった時に、手に職があれば助かるからな。最悪、就職が難しければ、うちの会社で働いてもらえるだろ」
本当に…なんでここまでしてくれるのか分からないけど、この点に関してだけは、感謝してもし足りない。心の中で一瞬だけ合掌し、話に戻る。
「彼女はメキメキ実力をつけた。半年学んだだけで俺に並ぶようになり、1年も過ぎた頃には、俺の及ぶところじゃなくなった。…天才っていうのは、ああい
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