第十一章
[4/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
間。そのはずなのに、さっきの言葉が気持ち悪いくらいに耳に残って離れない。
「すごく、知りたいくせに…」
青紫の扉を見つめる。…悲鳴を残して、静かになったご主人さまは、そのあとどうなったんだろう。…すごく、知りたい…
ご主人さま…早くここに来てください。じゃないと私…
この扉、開けちゃうから…
<i423|11255>
打ち放しのコンクリートに、黒い温水ボイラーが林立する地下のエリアで、僕らは身を寄せ合って縮こまっていた。…想像してたような、暗闇のコンクリート壁にダクトが這い回って所々から蒸気が洩れたり水が滴ったりするようなサイバーパンクな空間じゃない。ボイラーは一定間隔で、整然と並んでいる。蛍光灯までついてるし、ボイラーに身を寄せると、ちょっとあったかい。でもノーパソを立ち上げるとなると、電波状態は最悪らしく(山頂の上、地下じゃ当然だけど)どこに移動しても圏外になる。…ま、どっちにしろオフラインなんだけど。
「ビアンキ、どうした」
リネン室からがめてきた毛布に包まり、腹ばいになってビアンキに話しかける。ビアンキは伏目がちなまま、一度だけ頷く。
「…はい、ご主人さま」
…瞳の濁りが、ひどくなってきたように見える。ずっと起動しっぱなしだから疲れたのかもしれないと思って電源を切ろうとすると、捨てられた子犬のような目で僕を見上げた。
「…閉じないで、お願い、怖い…です」
「どうしたんだよ、本当に」
マウスでつついたり、撫でたりしてみる。少しだけ嬉しそうにするけど、すぐにはっとしたように振り返り、泣きそうな目で僕を見上げる。でも、何があったのかは全然話してくれない。
「…しかし困ったな。ここに捜査が入るのも時間の問題だぞ」
紺野さんがため息まじりに呟いた。さすがにボイラー室で煙草は控えているらしい。携帯が再びチカチカ光り、流迦ちゃんが現れた。
『ふふ…案外、しばらくは平気なんじゃない』
「なぜ」
『逮捕状が出るまでは、病院内の捜索なんて出来ない。…彼らは、待つことしか出来ない』
「…面会時間が過ぎても俺達が出てこなければ、病院が不審がるだろ」
『もっと大きな問題が起これば、構っていられないんじゃない?』
流迦ちゃんの口元に微笑が閃いた。
『例えばナースが2〜3人、謎の変死を遂げるとか』
「おっ…お前が言うとシャレにならん!いいか、絶対に変なことはするなよ!!」
『必要だと思ったら、勝手にやらせてもらう』
…落ち着け、僕…。蓮華の花で冠を作ってくれた彼女は、もう何処にもいないんだ…こんな事で泣きたくなってちゃ、この先辛いことばっかりだぞ…
『…あら、何か報告があるみたいよ』
「誰が」
『ハル』「代わって」『いや』
紺野さんは一旦電源を落とすと、再度立ち上げた。液晶画面がしばらくぐにぐに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ