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くらいくらい電子の森に・・・
第十一章
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時、柚木は最初、ブーツに合わせて膝丈のストッキングを買おうとしていた。しかし紺野さんが大人顔で『山頂だから寒いぞー、少しでも暖かそうなのにしておけよ』と、わざわざ釘をさしたのだ。…そして長めの靴下は、なぜか白のニーソしか残っていなかった。おそらく、柚木に声を掛ける前に紺野さんがハイソックス類を隠したんだろう。

…正直引く。嬉しい反面、ここまでされると、ちょっと引く。

「そういうこと言うんだったら、もうここから出ないから!」
「あっはっは…冗談だよ。出ておいで」
さっきとは打って変わったような爽やかな笑みを浮かべ、手招きしてみせる。柚木は人慣れしてない猫のようにおずおずと、ドアの陰から出てきた。

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「…変じゃない?」
「全然、変じゃないよ。ここ病院なんだし」
言いよどむとまた閉じこもってしまうので、僕は慌てて即答した。
「あとは…柚木ちゃん、携帯、持ってるよな。携帯からかぼすちゃんにアクセスした状態で目的のパソコンに近づけば、かぼすちゃんが反応する。反応を見ながら彼を探してくれ」
「…わかった」
「でも気をつけろよ。やばそうだったら、何もしないで帰って来い。一応、『彼』の画像を転送しておく」
僕と柚木のケータイが鳴った。『彼』は、男にしては随分と華奢で綺麗な、でも腺病質な少年だった。柚木は「わっ、美少年じゃん♪」などと浮かれているが…。
「じゃ、頼んだぞ」
もっと柚木のナース姿をイジるかと思ったのに、紺野さんはあっさり送り出した。この人なりに『彼』を心配しているんだろう。僕は軽く頷くと、車椅子を回した。



姶良達を見送ったあと、紺野の携帯が鳴った。『着信 芹沢』の表示を確認して、着信のボタンを押す。
「…どうした」
『あんたこそどうしたんだ。こっちは大変なことになってるぞ』
「横に警察でもいて『引き伸ばせ!』とか言われてるのか」
紺野は、苦笑交じりに応じた。
『似たようなもんだ。山梨の開発室も任意捜査だか何だかが押し寄せてるよ』
「おぉ、こっちもだ…例のとこだがな。で、どうだ。任意捜査には応じたのか」
『応じるわけないだろう。あいつら、今も外で張ってるよ。寒いのにご苦労なことだ』
「暖かい珈琲でも出してやれよ、心証よくしておくに越したことはないからな」
『阿呆。そんな心配してるヒマがあったら自分の心配しろ。伊佐木組の連中、あんたに不利な証言しまくってるみたいだぞ』
「伊佐木組だけだろ」
『捜査に協力的な分、やっかいなんだよ』
「ははは…任意捜査を拒んでるお前らとは心証がちがうわけだ」
『てめぇ、捜査受け入れるぞ』
「そりゃ困ったな。…で、どうだ。『配信』の準備は出来そうか」
『もう少しデバッグしておきたいが、仕方ないだろうよ。このままじゃ捜査令状が出る
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