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くらいくらい電子の森に・・・
第十一章
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…」
『皆、面白こと書いてるから私も煽っといたわ。うふふふ…』
「…流迦ちゃ〜ん…」
紺野さんが何か言おうとした瞬間、流迦ちゃんの画像が建物の見取り図のようなものに変わった。見取り図の地下エリアに、赤いマークが現れた。
『…ボイラー室よ。急いだら?』
「しかし…ボイラー室に行くにしても、一旦病院を出ないと。退出手続きしてからじゃないと、俺達はずっと病院内部にいるってことがばれて、捜索が始まってしまう」
『あぁ、言い忘れたけど』
笑いを含んだ声が、見取り図の裏側から聞こえてきた。
『警察、もう受付に来てるから』
「なにっ!?」
紺野さんの液晶は、一瞬ぶにゃりと歪んで待ち受け画面に戻った。



慌しい気配で目を覚ます。ご主人さまが、帰ってきたのかな?近寄ってきた人影の網膜確認をしようと思ったら、本体を畳まれて真っ暗になった。集音マイクをそばだたせて、ご主人さまの声を拾ってみる。
「姶良、さっきの地図憶えてるか!?」
「大体は…で、なに。本当にボイラー室に行くの」
「私、シャワー浴びたかった…」
「あ、多分大丈夫。さっきの見取り図の通りなら、比較的近くにシャワー室があるよ」
「まじか!?すげぇなお前!!」
そうなんだから!ご主人さまはすごいんだから!
――何がすごかったのかは分からないけど。
何が起こったのか分からなくてやきもきしてると、細く明かりが差した。見上げると、ご主人さまがパソコンのフタを細くあけて、私を見下ろしている。
「ごめん、また移動になったよ。…少しだけ、我慢しててな」
え、そんなのイヤ…て言いたいけど、私に言えるはず、ない。
「…はい、ご主人さま」

答えると、ディスプレイはまた光を失った。次に逢えるのは、いつになるのかな…。なんでかな、前に逢ったのは47分前、その前は1時間と6分前。その前は…。数日前よりも沢山、ご主人さまに逢えてるはずなのに。
すごく、逢ってない気分になってる。
一分一分が、とても間遠に感じてる。
傍らでまだ光ってる、青いドアを横目に見る。…さっきまで、あんなに寂しげな青だったのに、いつの間にか目に焼きつくような濃い青になってた。
「…そんなことしたって、開けないんだから」
コン…コン、コン、コン…ドアの向こうから、ノックの音が聞こえた。…いやだ、向こうに何かがいるんだ。…何かがいて、『開けろ、開けろ』って…
いやだ、もういやだ、狂っちゃいそう…怖い、だれか来て、ハルでも、柚木でも、紺野さんでもいい、誰か来てよ!!
『ビアンキ…ビアンキ!僕だ、開けてくれ!』
…ご主人さまの声!ドアの向こうから、ご主人さまの声がする!
「ご主人さまっ!!」
怖くて、もう何も考えられなくて…私は


青いドアを開けてしまった……


『ご主人さま』は、今日は調
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