弐ノ巻
輪廻
3
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出た。
「なんで邪魔するのよ!どいて、はやく!」
「しっかりするんだ瑠螺蔚さん!落ち着いて」
「あの中に!兄上がいるのよ!兄上が!」
「瑠螺蔚さん!」
あたしは高彬を睨みつけた。今まで、こんな気持ちを高彬に抱いたことはなかった。
あたしを邪魔する高彬が、いま、憎いんだ!
胸元が、カッと熱くなった。
「どいて!」
あたしが叫んだら、何もしていないのに、ふわりと高彬の身体が浮き近くの塀に叩きつけられた。
「キャーーーーーっ!?」
悲鳴が聞こえ、あたしは走りだした。もう屋敷は目の前なのだ。どこもかしこも炎に巻かれて門すら入口ではないけれど、兄上待っていて、助けに行くから!
「誰か瑠螺蔚姫を止めろっ!絶対に行かせるなっ」
高彬が後ろからそう叫んだ途端に、あたしは4人の男に次々と体当たりをされて地面に押さえられた。
高彬が近付いてくる。ぶつかった衝撃か、髪がほどけて散らばっていた。
高彬は、地に這い蹲るあたしの目の前に立った。煌々と燃える炎で、熱くその髪が煽られる。
「…」
あたしはすくっと立った。上に男が4人も乗っていたというのに、物ともせず。男たちはばらばらと落ち、あたしを恐怖で満ちた目で見た。
常識では考えられないこと。あたしは兄上のような霊力もないし、なんでこんなことができるのかわからない。けれどそんなことは今のあたしにとってはどうでもいいことだ。
「どきなさい高彬」
高彬は苦しそうな顔をしていた。
あたしは高彬の目の前に立ち、もういちど、弾きとばそうとしてー…目を見開いた。
「ごめん」
高彬は、本当に苦しそうにそう言った。その手は、あたしの腹部に食い込んでいた。
猛烈な吐き気と、息が詰るように意識が朦朧としてくる。
あたしは高彬の腕の中に倒れこんだ。
「…ごめん」
吐き気はあっても、吐くものがない。7日間も眠っていたらしいあたしには。
あたしはどろどろとした液体をえずきながら吐きだした。
目の前には、轟々と燃える炎の海がある。あの中に、兄上がいる。
気を失ってはだめ。兄上を助けなければ。
走りたい。走って、あの炎の中に飛び込んで、兄上を助けだしたい。
なのに、身体が動かない。悔しい。悔しくて、悔しくて、あたしの頬を涙が溢れた。もう瞳も開けな
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