第2話 からくり人形が髪を伸ばした昼。
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ぁ悪くはない。
峰年は彼を、時折は強引に見かけては、自分の言いたいことを一方的に言うのだ。
「あぁそうか。君にはまだ話していなかったな」
「全く聞いてない」
「ふふふ、いやなに、世間ではベンチャー企業というのが幅を効かせてるとか特にそうでもないとか言うではないか」
「一概に言えないのは確かだと思う」
「そういった背景を元に考えてみても特に何も感じることはないが、私はこれからそれなりに凄いことをしようと思ってるのだ」
「…何をする気だ?」
「ろくでもないことであることは確かだな」
「はぁ…」
瀬礼戸はそこで不安そうな顔をしていたがそこから小声で何かを言うと少しして苦虫を咀嚼させられたような顔をほんの少しだけ見せ、それから言葉を探すように視線を漂わせた。
「…」
峰年はその様子をただ見ていた。珍しいことではないからだ。
「…ヒントとか、無いのか?」
瀬礼戸は絞り出すように言った。
「ヒント、か…」
峰年は考えてみた。
「…歴史というものは、形骸化されてから初めて繰り返す」
「…どういうことだ?」
「そのままだ。人の過去の栄華を肩揉みした程度で分けてもらった気になっているのと然程変わらない」
「はぁ…」
「どうやら、ヒントのヒントが欲しそうだな」
「…いや、それはいい」
「ふ…、急にやる気を無くしたな」
「え!?…そ、そうか?」
瀬礼戸は急に驚いたような表情をした。
「大丈夫か?」
「え…あぁ、まぁ」
「ふむ、大丈夫ではないな。よっていつもの智羅だな」
「…俺、そんなに大丈夫じゃないのか?」
「授業中は隠しているのだな。涙を禁じ得ない」
峰年はそう言って右眼が疼く人の動作をした。
「いや待った待った待った」
瀬礼戸はガードマンのように手を広げた。
「おや?今更になって自己保身か?」
「いつの間に俺、そんなに可哀想な人になってたんだ?」
「さぁな。他の人がどれ程君の本性を知っていたのかは知らないな」
「いや本性じゃないかならな」
「ではなんだ?ひょっとこの仮面か?それはそれで苦笑の涙を禁じ得ないな」
峰年はそう言って両方の頬を斜め上に持ち上げた。
「苦笑しても涙は出ないだろ…」
「ふふ、言葉の綾だ。そんなことより、君は自分がおかしくなったとは思わないのか?」
「え…いや、俺は至って正常だけど…」
「イタくて正常?」
「言ってない」
「すまない。私は気づかぬ間に、君が話したことだというフィルターをかけていたようだ」
「…」
「しかしそれで正常となると、よっぽど異常な所で生まれ育ったと見える」
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