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アドリアーナ=ルクヴルール
第一幕その八
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ホッと安堵の息を漏らす。
「もうあの方は大僧正にお話しているだろうな。・・・・・・だとすれば行くしかない」
 彼は決心した。そして次の難問について考えを巡らせた。
「アドリアーナだが・・・・・・。とりあえずは出口で待つか。そして説明しよう」
 そう決めると側にあった席に座った。部屋に庶民が入って来た。
「あ、いいところへ」
 ミショネは彼の姿を見て喜びの声をあげた。
「僕ですか?」
 庶民のほうもそれに気付いた。自分を指差して尋ねた。
「はい、ちょっと頼み事をしたいのですが」
「今は面倒なのは出来ませんよ」
「わかっますよ。このメモを演出の方に渡して欲しいんです」
「そういうことなら」
 彼はあっさりと答えてそのメモを受け取った。そしてその場を後にした。
「これでよし、と」
 彼は一息ついて舞台の方へ目を移す。マウリツィオはふとミショネが彼の座るテーブルの上に置いた一枚のメモ帳に気が付いた。
「ん、紙か」
 彼はふとそれを手に取った。
「何も書いてないな。よし」
 丁度インクとペンもテーブルの上にあった。実に都合がいい。
「よし、ここに書けばいいな。さて、と」
 彼はアドリアーナへ向けての断りの返事を書きはじめた。その時観客席の方から拍手が沸き起こった。
「デュクロの出番だな」
 ミショネは舞台を見ながら呟いた。見ればアドリアーナに優るとも劣らぬ美しい女性が舞台にいた。
「しかし今日の役はやっぱり彼女には合っていないな」
 彼は顔を顰め首を捻りながら言った。
「あまりそうやってしゃがれ声を出すのはなあ。喉に負担がかかる。やはり今度からこの役は別の役者にしてもらうか」
 彼は腕を組んで呟いた。そこへ姫君が戻って来た。どうやら出番の間の小休止らしい。
「ええと、持って来てくれと言われたメモは何処かしら」
 何か頼まれ事があったらしい。
「あちらですよ」
 ミショネがマウリツィオが座るテーブルの上を指差した。
「監督、有り難う」
 彼女はそのテーブルのところに来た。マウリツィオはふと彼女に気がついた。
「あ、マドモアゼル丁度いいところに」
「?私ですか?」
 彼女は彼の言葉に少しキョトンとした。
「これもお願いします」
 そう言って自分が今書いたメモを彼女に手渡した。
「こちらはアドリアーナへ」
「はい」
 彼女はその場の勢いで彼の頼みを引き受けた。
「早く、出番も近いですよ!」
 ミショネがそこで彼女を急かした。彼女はそれに驚いてすぐにその場を後にした。
「これでよし」
 彼はその後ろ姿を見送りながら呟いた。
「アドリアーナは僕の言葉を受け取ってくれる」
「ふう、何とかこの場は切り抜けたか」
 ミショネは再びデュクロへ視線を移していた。彼が良く思っていなかった場面が終
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